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トップ指導者&選手特集

東亜学園高等学校 バレーボール部
佐藤 俊博監督 インタビュー <前編>

第69回春高バレーの男子決勝戦。大会史上初の東京勢同士の決勝戦を記憶している人は多いのではないだろうか。
今回はその決勝戦を演じた東亜学園男子バレーボール部佐藤俊博監督に春高でのエピソードや前監督小磯先生との思い出話などを長時間にわたり話していただいた。

取材日:2017年1月18日

―春高準優勝おめでとうございました。まずは今大会を振り返って感想をお聞かせ下さい。
ありがとうございます。そうですね、大会の感想で1番にくるのは、子供たちと楽しい大会にすることが出来たなというのが1番です。それで次に出てくるのが、淋しいなっていう感情ですかね。やっぱり3年生の最後の大会は毎年そうですけど、頑張ってこの大会に向けて1年間やってきたことなので、これで終わってしまうっていう淋しさが次に来る。それとやっぱり悔しさですかね(笑)
一言で言ってくださいって言われたら、本当に子供たちが楽しめた、それを見ている僕らも楽しかった、そんな大会です。
―ありがとうございます。印象に残っている試合やエピソードはありますか?
エピソードはいっぱいあります。掘り下げればいっぱいあります。ただ、印象に残っている試合は今大会で言えばやっぱり3日目の清風戦ですかね。あそこで終わっていてもおかしくなかったゲーム内容だったんですけど。それをひっくり返して、センターコートに行けた。そして決勝まで行けた。そのきっかけはやっぱり3日目の清風戦だったと思います。
―厳しいゲームでしたよね。やはりセットを取られると選手は心理的な焦りや不安が生まれると思いますが、そんな時に監督からは選手にどのようにアドバイスしたのでしょうか?
アドバイスっていうか…。うーん、去年のチームは(春高で戦ったチーム)ものすっごくストレスに弱い子たちなんですね。だから上手くいかないと、嫌になる。何か強く言われるとしょげる。楽しいと意欲的にやるんですけど、そうじゃないとすぐにバラバラになってしまうチームなので如何にしてチーム作りで、壊れないように崩さないようにっていう風に作ってきたんですけど。やっぱり勝負の中でこういう接戦であったりとか、上手くいかない時間帯とか、ゲームが動かない、はまらない、やりたいことが出来ないという時間帯がやっぱりあるので。それが理由で勝てなかったインターハイ。じゃあそれをどういう風にして、春高に向けてそれをクリアしていくのかってなった時に、やっぱりこう内から湧き出るような姿勢でやらないと多分変わってこないかなと。こっちがいくら必要だなと思って言っても、頭では分かっているんだけど、やっぱり自分でやりきれない部分が多かったので。本当に自分で、頭で分かって理解した上で出来るような状況を作らなきゃいけないなっていう練習過程を踏んできたんですね。とは言いながらも、やっぱり相手は子供ですから、それを上手くコントロール出来ない。なんでどうしたら良いのかなって思ったんですけど、全部想定内にしちゃえば良いんだって思ったんです。例えば雨が降ることも雪が降ることも、晴れることも、こういうこともあるんだぞっていう想定内にしておいて。当日雨が降ったら、ああ予定通りだなって。そしたらそれがストレスじゃなくなるんですよ。25-0で勝とうとすると、それだけで全部がストレスに感じてしまいますけど、「まぁ良いんじゃない?25-20とか25-22とかで勝とうとすれば」って選手たちに言いながら。ただその状況をどこで自分達がそういう風にひっくり返すかっていうことが重要なんですよね。とにかく選手に言っていたことは「負けていても、セット取られても予想通りだよ。予定通りだよ」と。「最後に2セット取れば良いんだからね」っていうことは言っていましたね。それが功を奏したかどうかは分からないですけど、本人たちも勝ちたいし、慌ててなかったっていうのは事実だと思います。
―先生のそういった配慮があって、動揺することなく勝利したわけですね。
うーん…逆にまずかったなと思ったのは、決勝戦の1セット目取ったんですけど。選手に「このまま上手くいかないぞ!良いか、お前たちだって1セット取られたら次は必死こいてやるだろ?次のスタートが勝負だよ」って言ったんです。そして2セット目のスタートも勝ってたんですよ、10-5ぐらいで。それでその後、バタバタしてしまって追いつかれて、ひっくり返された。「でも良い、こういうことだってあるんだよ。大丈夫、5セットマッチだから。ただやっぱり次叩いとかないと、せっかく潰れかけた相手がのっちゃうから。次取ったら勝つよ」って言って。僕も次の3セット目が勝負だと思っていたので次取ったら勝つって思いました。でもそれって要は次の3セット目が取れなかったら負けちゃうってことなんですよ。だから3セット目を取られてしまった後、4セット目のスタートはプツッと切れた状態になってしまったのは、僕も先走っちゃったかなって後から反省しました。だけどあの時は取って、取られてだったので、やっぱり取りたかったなって思います。3セット目を取られちゃったら気持ちが折れちゃうかもな、この子達はって思ったので。「ここが勝負だぞ」って言ったんですけど、そこで負けちゃったからプツっと、ちょっと苦しい状況になりましたね。だから本当に、言葉って難しいと思いました。この子には合っても、この子には合わない。この代には合うけどこの代には合わないとか、その逆もあるので。去年はこの言葉言っても全然駄目だったけど、今年の代にははまるなって感じたので。なんていうんですかね、勉強させられますよね。日々勉強ですね…
―言葉は生き物みたいですよね。
本当ですね。本当に、昨日はダメだったけど今日は、はまったとか。よく顔を見て、雰囲気を見て言葉を使いこなさなきゃいけないなって思います。
―準々決勝の開智戦は如何でしたか?
タイプ的に本当にやり辛い相手だったんですよね。高松工芸みたいなコンビでくるバレーもうちにとっては嫌だし、エースが打ってくると分かっていて、難しいコンビはしない、だけどそれを上手く打ち切ってパワーと高さとテクニックでなんとかしちゃう。そんなチームなんです。だからうちにとっては凄くやりにくい。じゃあ何が良いんだっていうところなんですけど(笑)本当にレベルの高い試合で目立ったと思いますね。現場でやっている方では1セット1セット駆け引きがあって、探り合いながらっていうか、そういった部分では楽しかったですね。
勝ったから言えることかも知れないですけど、開智戦は本当に探り合いでした。
―どういう風な探り合いがあったんですか?
去年うちは開智と対戦して負けました。何で負けたかって言ったら、センターラインで切り込まれたんですよね。相手は今回も絶対それをやってくるだろうと。ただそこに下級生が今年は入っているから、じゃあどういう風に攻めてくるのかなっていうのがまず1つ。それから左、ライト側の攻撃に対してうちはちょっとシフトが弱かったので左をどういう風に抑えるか、それからバックアタックを絶対使ってくるだろうっていうのも1つ。それから如何にして相手のサーブレシーブを崩して真ん中を使わせずに単調な攻撃にして、それを打ち切らせないようにするか。じゃあどういう風に相手が何をしてくるかって考えた時に開智は一癖二癖あるから必ず何かしてくるんですよ。だけどうちの子供たちも1年間見てきた中で三癖四癖あるから、相手がやってくる事を先に考えて、まずどんなことをやってくるのか考えて準備しようって。それこそ全部想定内にするようにして、それで生徒から「こんなことしてくると思います」「こんな攻撃してくると思います」とか声が上がり、準備をして臨んだ。それで「2セット目絶対違うよ、ローテ変えてくるよ、メンバー変えてくるよ」って言っていざ蓋開けたらやっぱりローテ変えてきたんです。それで「バックアタックくるぞ。どう対応するの?ブロック付くの付かないの?」って言ったら「今日はなんか拾えそうな気がするので要らないです!」とか言って「よおし、じゃあそれ拾えば勝ちだ!」っていうところですかね。でも逆に言えば、こっちも単調じゃなくてコンビを組みたかったんです。だからサーブレシーブのウェイトって凄く大きかったんですけど、相手にそこを読まれて2セット目のサーブが凄い強くなってきたんです。それでカットの制球率も悪くなって単調になってしまった。それで2セット目取られました。「ほらね、相手がやってくることも考えてくることも一緒だから。そのバックアタックをどうやってするかっていうところだ」って言ってからまた拾うことが出来た。試合中はそういう駆け引きが本当にたくさんありましたね。
―凄いですね…
いや?凄く楽しかったです。
―準決勝の高川学園戦はストレートで勢いよく勝利されてましたけど、これは何か策があったりとかしたんでしょうか?
作戦ですか?いや、作戦っていうのは無いんですけど。子供たちにとっては春高=オレンジコート。その中のセンターコートって本当に聖地の中の聖地なんですよね。もちろん日本一になりたいだなんだっていうのがあったとしても、やっぱり皆センターコートでやりたいわけですよ。
僕らだって、例えば芸能人をバッと見た時に「ああ~!」ってなるわけで。オーラがあるって雰囲気にのまれるっていうことがありますけど。でもその状況になったらもう負けだなって思ったので。やっぱり1回戦はどのチームも緊張していました。開会式の雰囲気って、独特な雰囲気なんですよね。うちの子供たちも開会式の独特な雰囲気のまま試合に入って、フワフワしてたって言っていました。はたから見て地に足がついていない状態だったんです。
準決勝の前も選手達は緊張していたので「良いか?今のままだとセンターコートでも同じになるよ。センターコートでやることをずっと考えてやってきたんだから(センターコートの試合のビデオをずっと見せていたので)お前たちにとってここはホームだろ?やっと帰ってきたな、一年越しに。まぁ去年はやってないけど、1年間見続けて、1年間やり続けて、本当にやっと自分たちのホームに帰ってきたなっていうぐらいの気持ちでいかないと駄目だぞ」って会場に入る前に、一回集めてそこで話をしたんです。センターコートとか、観客を見た瞬間に「うわ~」って思ったら負けだぞって。なんだ、お客さん少ないな~くらいな感覚でいとけよって。ああ懐かしいなって、やっと戻ってこられたな、やっとこの舞台にこられたなって、俺の舞台だなって思うか思わないかは本人の価値観の問題なので。そういう風にしなさいとは言いましたけどね。それで終わった後にどうだった?って聞いたら、「自分でコントロールはしました」って言ったので。ということはやっぱり「凄い」って思ったわけですよ。駄目かな~って思っていて、フロア入って試合前練習した時にやっぱりみんなキョロキョロするわけですよ。集合って声かけて集めても、目が僕を見ないであっちこっち見ている(笑)そこで、ちょっと声を荒げて「おい!集中しろ!今俺が話しているんだから、話している人をちゃんと見ろ。当たり前のことでしょ?」って言って少し話をして、「顔が引きつってるじゃないか。そんな顔して今まで勝ってきたわけじゃないでしょ?」って言いました。とにかくこの大会楽しんで、自分の力をしっかり出しきって悔いの無いようにやろうとやってきたわけだから。ここまで来てそんな顔をしていたら力が出せない。もったいないよって。ここに立てて試合が出来るのはたった4チームしかないんだから。楽しんでやれって。それで「大丈夫か?お前たちなんか今までと違うことやれよ!」って言ったんです。(笑)そうしたらちょっとニヤニヤってしてきて、「じゃお前は今日何するんだ?」って聞いたら「今日この攻撃します」とか、「よし分かった、じゃあまずは俺が先頭きってやるから」って言って、それまであんまり公式練習でボール出したりしていなかったんですけど、この時は天井サーブ打ったりとかして。あれ、本当はいつもやっているんです。
ただ、今回はオーダー用紙を相手に応じて変えるので「俺は打たないからな」って子供たちには話していて。ただ、この時は「よし!分かった。今日は俺がボール出すから」って言って。そこで「なんか緊張がほぐれた」とは言っていましたね。そういうことしかしていないから、作戦にはなってないけど(笑)
そういう心理面の、なんていうんですかね、リードを引くっていうか、手綱を締めるっていうか。
―先生のお話しがあったから緊張も解れて、ストレートで勝利することが出来たわけですね。
うーん、100ではないにしても0ではないと思うんですよね。多少はやっぱり影響はあったと思うんです。でもああいう舞台で雰囲気に飲み込まれずに力を出せたあの子たちは大したもんだなと思いますね。
―決勝の東京対決のことを伺いたいのですが、まず組み合わせの段階で意識はされていましたか?
正直に言うと1回戦で駿台とやりたいなと思っていました。(笑)いや、それは同じ地区としてあり得ないから逆ゾーンに行くのは分かっていたので、次に駿台とやるには決勝しかないなと思っていたんですけど。春高予選終わった後にもう1回駿台とやりたいなって、思っていて。選手には「駿台を倒すのはうちしかいないからって。お前たちだったら駿台を倒せる」って言い続けてきたんです。それで春高の組み合わせをパッと見た時に、これは神様が決勝まで頑張れって後押ししてくれるなって思いました。決して楽な組み合わせではなかったですけど。
―駿台学園は同じ東京代表で、良く知る相手ですよね。そういった相手だからこそのやり辛さはありますか?また、「駿台を倒すのはうちしかいない」と先生が仰っていた要素はどのような部分なのでしょうか?
手の内を知っているっているより、同じ東京都なので対戦出来る頻度が多いんです。ただ練習ゲームでうちよりも多く試合しているチームは他にもあると思うので、そういうチームの方が駿台のことは知っていると思います。ただ実際問題、練習ゲームで戦うのと本当の地区で試合で戦うのでは本気度が全然違うから、試合でやる以上はやっぱり勝ちたい、倒したいと思うので研究をするんですよね。そういう部分で言えば、まずうちが1番駿台のことを研究しているだろうと。それから中学校時代に選抜で一緒にプレーしたり、駿台と対戦している子もいるのでお互い仲が良いとか、こんなことをしてくるとか、こういうことが特徴だとか、特技だとか癖だとかが子供たちがまず分かる。そういった情報の中で良く知っているっていうのはあると思います。それでなんでうちが駿台を倒せる要素があるかというと、根拠はないんですよね。技術的なとこでは正直勝る所はないんです。ただ、やっぱり1番戦いで大事な精神的なところで、他のチームにはない心理をうちは持っているからなんだなって思います。子供たちに「お前らは駿台を倒せるよ」っていう話しをするんですけど、それは何故かっていうと「お前たちは駿台を倒そうとしている。強い相手に対して向かって行こうとする姿勢があるからなんだ」と。「ああ?駿台強いな、全中の時の優勝メンバーだな、でかいな、なんか力強いな、ああ皆エースみたいだな」って思ってしまった時点で既に自分に負けてるわけですよね。確かにそれは事実だし否定はしないですけど、やっぱり勝負って年が上でも下でも対等じゃないといけないと思うので。大学生とやる時に「ああ?大学生だ強いな」って思うならやる意味がないし、相手を倒しに行くぞくらいの気持ちでやるべきだと思うんです。逆に中学生だからって見下しても駄目だし、そのコントロールって自分のパフォーマンスを出すためには1番大切だと思うんですよ。
相手が強そうだと思ったら、その時点で絶対勝てないじゃないですか。それこそ弱くても堂々として強そうに見せなきゃいけない。「自分がちょっとでもそういう風に思ってしまったらやっぱり力は出ないよ。お前たちは駿台を倒そうとしているだろ?強いとは思うかもしれないけど、倒そうと思っているだろ?倒したいと思うだろ?そう思っているチームしか駿台を倒せないぞ」って。それをマインドかけてお前たちなら倒せる、倒せる、倒せるってずっと言い続けると本当に、豚も煽てればじゃないですけど(笑)やっぱり「俺ら、いけるんじゃないか」って思うわけですよね。そういう思い込みの力って絶対大事だし、じゃあそれをするためにはこれが必要だよね。これがこうだよね、こういうこと出来なきゃ駄目だよね。これが出来れば勝つよっていう風に道筋をたてて。子供たちも1回でも結果が出ると僕の指導に対する信頼とか「本当に自分たち勝てるんだ」ってマインドが出るわけです。だからこそやっぱり結果が必要です。結果が伴うと子供たちの自信になるわけですよね。1番良かったのは2年前の春校予選、今の大学1年生の春高予選ですね。その時、完膚なきまでに駿台を倒したんです。向こうも怪我人がいて調整不足だったり、メンバーが変わっていたりとか色々あるんですけど、でも本当に自分達にとってはこういう勝ち方はありえないよなっていうくらいの試合でした。それが子供たちの自信になっていると思いますね。
あと、「今年は多分、力的には駿台を中心に全国が回るだろう。1番手は駿台で間違いないと思うけど、でもその1番手を2番手にするのはうちしかないぞ」っていうことを言い続けてきました。それでインターハイ予選も間違って勝っちゃったんですけど(笑)でもそういうマインドがずっと残っているから、っていうのはあるかもしれないですね。
―白熱した決勝戦の舞台裏にはそういう気持ちの部分があったんですね。
春高でのエピソードをたくさんお聞かせ下さりありがとうございました。
後編に続く

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