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トップ指導者&選手特集

NBA解説者 専修大学バスケットボール部 中原 雄アソシエイト・コーチ
NBA解説者 専修大学バスケットボール部
中原 雄アソシエイト・コーチ インタビュー

日本バスケに「風穴」を開けたい―――開口一番、熱い言葉が飛び出した。現在WOWOW TVでNBA解説者を務める中原雄氏は、自身も元実業団チーム、いすず自動車の主将にして優勝も果たしている名ガード。その現役時代からずっと抱いてきた、「変革」への強い思いを実現すべく、昨年自身の事務所も開設。今季は04年に就任した母校専修大学の監督も後進にゆだね、「育成&国際ブリッジ役」に専心することを決めた。専修大学史上初のインカレ制覇へ導き、無名の高校生を日本一実業団チームの主将にまで育て上げたその指導手腕を、今度は世界へ向けて突破口を開くために使っていく。
バスケ大好き少年がそのまま大人になったかのような中原氏には、今でもカジュアルなストリート・スタイルが良く似合う。周囲の人々までも皆バスケ・ファンへと染め上げてしまうような熱いエナジーは、どこまでも尽きることがない――。

取材日:2014年4月10日

―風穴!ですね。
うん。人生のキャリアを終えるまでには、今の日本がやってないようなことをやり、後の方々にとって最低でも「道しるべ」というか、形になればいいなと思っている。
後につながるようなことをやっていきたい。
―日本がやってないこととは?
日本では、バスケ・クリニックとかたくさんあるのに、何かが足らない感じがある。それってやはり、誰一人、海外で一線級でやってる人がいないということもあるなと…。たとえば、田伏君がNBA入りを果たして以来、誰も、箸にも棒にもかかっていない。日本でも、実力のある人はたくさんいるし、中国だとか韓国とかはもっと出てきているのに。指導者の方々はほんとに一生懸命、「日本を変えてやろう」って思って、各地で子供たちにバスケの面白さとかを教えたりしているのに、そういうのはいったい、どこへ行ってるわけ?
ラプターズのドウェイン・ケイシー、凄い親日家で、昔から知っているんだけど、「なんとか日本の若手とかを連れていけるような状況になったらよろしく」ってずっと彼に言っているの。彼は現役のときから「いつでもいいよ」って。今も変わらずにね。
僕は真に受けるタイプだからさ(笑)。それで、去年の6月、事務所を起こしたんだ。クリニックやってる中で、キラリと光る子たちもいる。「NBAとか生で見たら、きっといい刺激を受けるだろうな」っていうような子たちを、どんどん観に連れて行ってあげたい。そこでひっかかる子がいたらそれでいいし。20年前のサッカーを考えてみてほしい。当時はまだ、サッカーよりもバスケ人気のほうが上なくらいだったのに、今は、サッカーどういう状況?Jリーグが発足して20年、セリエがどうのとか、世界レベルのチームで「試合に使ってもらえない」とか、そういう高いレベルの悩みが、ニュースに出ている。
―日本サッカー界とバスケ界は何が違うのでしょうか?
やっぱり、サッカー界は努力してるよね。外に向けてメディアを引き込んだり。デビッド・スターンがNBAで30年間やってたことを、日本サッカー界はやっていると思う。
僕もコネクションをしっかり作り、バスケの可能性のある子たちに、ちょっとでも「世界はこうだよ」っていうのを見せたいんだ。
―中原さんが「橋」というか、「パイプ役」になりたいと。
そんなかっこいいものではないが…もう、地べたを這いつくばってでも行きたい。
僕がそういうことを言うと、「あいつ、また馬鹿なこと言ってる」と言われて終わってきたけど、どんなことがあっても、その志は失ったことない。何かしらもぐりこめたら、あとは繁殖していけばいいだけだし。あきらめた時点で無くなってしまう。夢は夢で持っていていいと思う。中国、韓国、台湾であれだけ盛り上がっているのに、なんで日本では…。
僕ももう50近いんで、残り25年、75歳くらいまでは頑張りたいんだ。いつも曇りのない目でね。バスケが好きだから。そんな思いの、最高峰でプレイしてるのがNBAだよね。バスケが好きでしょうがないじゃない、みんな。日本に風穴っていうなら、自分には何ができるのかを考えて、行動に移すしかないと思って。10年も20年も、大きく変わっていないからね。
―日本バスケ界がサッカー界のように成長していくために、世界で通用する選手を育てたいということですよね。
日本人でもやってやれないことはない。その先駆けとなってくれたのが田伏。彼だって体格的には日本人の中でも小さいほう。情熱があって挑戦したいという人間を、どんどん見つけて押し出してあげたい。
―バスケは中原さんの人生そのものでしょうね…。
ああ、それはもう。「Ballin' is my life(バスケは俺の人生)」って感じでさ。だって、今までこれで生きて来たし。
死ぬまでこれでやっていく。ほかの職にはつけないよ(笑)。
―そんな中原さんが考えるバスケの醍醐味って何でしょうか?
全部面白すぎて分かんないなあ(笑)。かっこよく言えば、チームスポーツってことかな。「誰でもできる」ってこともいい。ボールひとつ、靴ひとつあれば、金持ちでも貧乏でもできるってとこが、素晴らしいよね。あとは、性格がもろに出る競技だ。ほんとにそう。いや、絶対出る(笑)。
だから、ヘッドコーチからすると、たとえば、「こいつは性格が荒くれてるから(笑)、人が嫌がるような仕事も平気でやってくれるだろう」とか、それぞれの性格を考えて使うよね。
―なるほど。指導するときそういうことを考えてるんですね。
うん。怒るときも、「こいつはみんなの前で練習を止めて言うと、しゅん…てなっちゃうな」って子には、よっぽどのことがない限り言っちゃだめ。
だけど、こいつは大丈夫ってことになれば、言うし。性格はひとりひとり違うし…育った環境もそれぞれ違うわけだから、そのレベルで話をしてあげないと。
―優しいコーチですね。
チームスポーツだからね。人に対してものを言うときは、生ものだから。
大学生くらいというのは、半分ガキで、半分は知恵がついた大人みたいなもので、多感なとき。ちょうど大人になるときで、女性関係とか…失恋したとか、どうのこうのね(笑)。
そういうことを、いろいろ考えながら接しているつもり。
―コミュニケーションを取るほうですか?
最初っからは取らないんだ。1、2年のときは。とにかく自分の得意なことを、失敗してもいいからどんどんやれと。
それが出だしてきてから、声をかける。まずは、自分のいいところを思いっきり出さないと。それがまずあって、次にこれとこれをしていこう…みたいにやらないと、うまくならないよね。
―あるときは怖いコーチ??
そうだなあー、、、僕のコーチのモデルと言えば、もう亡くなったがNBAの技術顧問をやってたピート・ニューウェルとかなんだけど。ほら、ビッグマン・キャンプをやってた人ね。それと、やっぱりドウェイン…ラプターズの。それからもちろん、現役のときのいすずのコーチ、小浜監督。あと、彼もやはり現役の時にお世話になった方で、今は確かカタールのナショナル・チームのコーチをやってるトム・ワイズマン。
小浜監督は、選手とあまりコミュニケーションを取らない人だったんだよね、きちっと線引きしてるというか。でも、トムは結構取入っていく。
僕はその両方を持ちたいんだ。それは別に、選手に媚を売るとかではなくて。教えるってことの前に、人間でいたいから…。でも厳しいことは厳しくというようなのが理想だな。ドウェインなんかは、凄く情熱家でもあるし…ああいうのが全部混ざったような、「日本人ではいないだろう」というような指導者になりたいですね。それで、死んだときに少しは爪痕残ってればいいな、っていう。
―コーチング・メソッドも独特なんでしょうね。
今まで、NCAAから NBAまでいろいろな練習を見せてもらってきた。NBAはやり方としては凄くシンプルなんだ。だけどやはり、能力の高い連中がやってるから、シンプルなことでも凄く見える。NCAAは逆に細かい。両方をうまいこと自分なりに取り入れて、これは日本人に向くなということがあればどんどんやっていきたい。パクリでも何でもいいから、まずはやってみる。
その中で、「ああ、これはちょっと難しいな」と思ったらそこは変えたり。あとは、10年間プレイした、いすず自動車の練習法。ピート、ドウェイン、トム、小浜監督の練習が全部混ざってる感じ。僕は今でも、あのチームにいたから今、コーチの真似事できてるのかなって思ってる。あの10年間で、凄く基礎ができた。もの凄く刺激を受けたんだ。もう絶対コーチになりたい、って思ってたよ。
―指導者としての中原さんが目指すバスケ・スタイルとは?
基本は絶対、インサイド・バスケ。そりゃあもう、シャックがいたらいいよね(笑)。
―なかなかいないですよね(笑)。
そうそう、いないでしょ(笑)。だから考える。理想はあるが、現実はこの駒だったらどうするのか…それが僕の勉強。逆に言えば、それが面白いところなんだ。だから今は、もがきながらコーチングしてるなっていう実感がある。それで結果が出ると、これでよかったんだ、なんて。
そうすると書き留めて、次に同じような状況だったときに見返したりね。うちの部はさ、有名高校からスカウトしてきた選手とかじゃないから。だから、僕がこの大学を見てて嬉しい言葉はね、誰かがうちの試合を見ていて、「あれ、誰や?」って言われること。そういう選手が過去に何人かいたよ。
ひとり、ひどい例では、一般生で入って来て(バスケ特待生ではないという意味)、今、日本一のチームにいる選手もいる(笑)。アイシンの喜多川修平です。
―分からないものですよね。
彼がうちに入ってきたとき、183~4cmくらいでPFなんだよ。「たぶんダメだな~…」(笑)なんて思ってたら、やらせてみるとシュートがうまい。
1年目はユニフォームも着れなかったけど、2年目くらいから、ちょこちょこ試合で使ってみるようになった。そしたら、あれよあれよという間に、4年のときにはユニバーシアード(笑)。ボールを持ったら打てと言ってたんだ、シュート入るから。ミドルも3Pも両方入るの。聞いたらね、高校の時は、ボールを持った時の動きというのをあまり練習してなかったって言うんだね。
それで、大学2年くらいから、それをやらせた。うまいことアイシン行って(笑)、キャプテンで、もう何回も優勝してるよねー。
―まさにコーチ冥利につきますね。
いや、あいつの場合は、あいつが努力したからだよ。僕ら、コーチとかは、「こういうふうにしたらいいんじゃないか」ってことを言うだけで。
そのあとは、その本人が努力するかしないかだから。本人が、絶対「上」でやりたいって、毎日努力していたから。あれは本人の努力の結果。選手は自分で頑張っている。僕は、自分が選手の時の経験もあるから分かるんだ。
―今の専修大、オフェンス、ディフェンスどちらの練習分量が多いのですか?
うーん、いやまあ、うちはねえ、実は、体作りにかなりの時間をかける。ウエイト。根本的な体作り。無名校出身が多いからね(笑)、あとは体でボコッ!と(笑)いかないと。
対戦相手の中で、「わ、ここもやってんな~」て思うのは青学くらいだな(笑)。あそこはトレーナー陣がすごい。うちもトレーナー凄いんだ。なので、妥協はさせない。僕自身がちょうど15年前、ここにコーチ・スタッフとして来させてもらったとき、そのトレーナーさんもある知人の紹介で一緒に来てもらって。それ以来、やっすい給料(笑)でやってくれてるんだ。
―今はウエイト・メソッドもどんどん進化していて、やればやるほど成果が見える分野ですよね。
そうそう。特に大学生あたりが一番見える。ほんとに2か月やれば変わるよ。オフの間、12月に終わって1、2月と真面目にやってる奴は、次来た時、3月会うときに「あら?」ってなってる。それはもう間違いない。
大学になっちゃうと、上にはもう伸びないけど、フィジカルに強くなれば必然的にスキルも上がると、僕は思っている。同じことをやっていても、体が出来てくるとそのプレイの幅が広がってくるから、ウェイトはもの凄く重要視している。まあでも、それはもうトレーナーの域なんでね。彼がしっかり結果を出してくれているということ。
―選手、指導者の方々へ、アドバイスをお願いいたします。
選手たちへは…僕ね、高校くらいから今までずっと感じてることがあって。
日本のバスケって、もし、小学校で195cmあったとするよね、そうすると、すぐにリングに対して背中向かせるんだよね。そしてボール持たせて、振り向かせてシュート。それ一辺倒なんだ。
―ポストプレイってこと?
そうそう。でもね、小学校で195cmあっても、そのあと、大学まで全然身長伸びなかったら(笑)…そしたらどうすんの!?って話(笑)。
あのね、小学校でも中学校でも大学でも、それこそNBAでも、バスケって、ドリブルとパスとシュートなんだ。それが必要不可欠。
たとえ2m10cmでも、ドリブルとパスとシュートが出来て悪いってことはないよね?僕は、現役のときも、ずっとそう考えていた。「アメリカ人て、でかいのに何でいろいろうまいんだろう?」って。
―そうですよね。あちらだと、動けるビッグマンも多い。
その手の教育が特に超越してるのが、ヨーロッパ。スペインだとか、ドイツだとか。だから、2m15cmのノビツキーが、あれだけ外から打てる。
ガソルなんて、ドリブルもパスも全部できる。06年の、日本で世界選手権やったときね。スペインの練習にもぐりこんだの(笑)。(※この大会では、スペインが優勝した)。
そしたら、ポストアップの練習なんか全然してない(笑)。ガードとセンター、普通にドリブル対戦やってるんだ。あれを見たときに、自分がそれまで追いかけてきた考え方は間違ってなかったと思った。それは、ポストアップもいいと思うんだ、でも、それだけじゃだめなんだよね。日本はなんでそれだけやらすんだ?って考えたんだけど、それってその部で優勝したいから。優勝なんてどうでもいいんだよ(笑)。
選手がうまくなればそれでいいんだ。いろんなところで通用するようなコーチングをしたい。小学校でこれだけ、中学校でこれだけ、っていう、偏った教え方をされていたら、今度その上に行ったときに、何もできなくなる。そんなんじゃだめだって僕は思う。だから僕は、ドリブルとパスとシュート。ポストアップさせるんなら、140cmのガードにもやらせなきゃ。もう絶対。すべてができるように。韓国が実は今、そういう感じになってきていて、だから少し変わってきている。
―オールラウンドな練習をさせろと。
バスケってのは、籠の中に球を放り込むって競技じゃないか。誰でも3を打てなきゃいけないし、誰でもそこまでドリブルをしていけなきゃいけない。うまい、下手ではなく、「やってない」だけ。
―センターが3を打てたら、素晴らしいですよね。
何の問題もないでしょ?
―じゃあ、逆に選手へは、そういう練習をどんどんやれということですよね。
やってもらいたい。やらせてもらえない、っていう言い訳もしちゃだめだ。「こういうふうにやりたい」ってのがあれば、自分の時間で10分でもいい、それを積み重ねていけば。5分でも。小学校、中学校ならまだまだ先がある、どんどんやってほしい。チーム練習は練習で、それももちろん大事。ドリブル、パス、シュート。
どんなことがあっても、それはバスケには欠かせない。バスケをやる以上は、それがないとおかしいんだ。

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