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中央大学バレーボール部
柳田 貴洋選手 インタビュー

第55回目のトップ指導者&選手特集では、中央大学4年生の柳田貴洋選手へインタビューを行ないました。
今年度から中央大学のキャプテンを任されている柳田選手に、春季リーグを終えての感想や、自身が練習中に大切にしていることなどを語っていただきました。

取材日2018年5月30日

―まずは春季リーグ戦お疲れ様でした。リーグ戦の感想をお聞かせ下さい。
ありがとうございます。やはりまだ実際に相手と対戦してみないと、チームの良い時と悪い時というものが分からない部分もあったので、そういった不安要素を抱えた状態で自分たちの戦い方を模索しながら、試合に臨んでいた感じでした。
その中で前半戦は連勝することが出来たんですけれど、途中、慶應大学さんと対戦した時に、自分たちの安定感のなさが表に出て負けに繋がった試合がありました。その試合が春リーグの中で一つきっかけになったのですが、自分たちのミスによる取りこぼしをなくして、対戦相手に思い切りぶつかれるようにすることが、春リーグを通して出た課題かなと思っています。
最終的には三敗という形になりましたが、まだどんなチームに対しても自分たちのバレーが出来ていないので、そういうことに対してはこれから一つ一つの弱みを消して、逆に強みの部分を伸ばしていき、東日本インカレまでには自分たちのバレーを出せるようにしていきたいと考えています
―春は挑戦するためのリーグだったのでしょうか?
自分たちは中央大学という誇りを持ってプレイしていますけれど、去年とはメンバーがまるで違います。確かにインカレ三連覇をしていますけれど、今年のチームは全く別物だと僕たちは捉えているので、挑戦者という気持ちで春リーグには臨みました。だけどそういった気持ちでいても、実際に下位のチームとぶつかった時、王者でもないのに王者であるかのようなバレーをして、受け身になってしまうということがあり、やはりそこの部分が課題かなと思っています。そういうところの意識をしっかりと変えていかないと勝てる試合も落としてしまいますし、上位チームにも挑戦者の気持ちで試合に臨めなくなる。僕たちは決して守りに入って勝てるチームではないので、そういうところは反省点として出たところですね。
―今年からチームのキャプテンを任されていらっしゃいましたが、その点については如何でしたか?
キャプテン自体は小学校の時から、小中高と各カテゴリーでやらせていただいていましたが、やはり大学でのキャプテンというのは今までのキャプテンと比較が出来ないくらい責任が大きいと感じました。チームによる伝統とかも色々ありますし、特に中央大学は輝かしい歴史があるので、そういうところを僕がキャプテンとして任せられた時に全う出来るのかな、という不安は最初ありました。だけど僕一人でチームを回すわけではないので、キャプテンという立場は自分に任されましたが、実際にチームを回しているのは4年生全員ですし、3年生を含めた上級生がいて、そこについてきてくれる1、2年生がいます。チームのことを全て僕一人でやるわけではないので、色々とチームメイトや、仲間の力を借りながら、時には後輩に力を借りながら頑張っています。また、そういうことが出来るのは中央大学の良さだと思うので、色んな人とコミュニケーションをとったり、仲間と助け合ったりしていく中で、凄くやりがいのあるものだなと感じています。
―ご自身のキャプテンシーを採点すると何点ぐらいですか?
うーん、点数で言うと難しいですけど、決して高得点ではないですね。点数で言うと30~40点じゃないでしょうか。
―だいぶ辛口な評価ですね!
というのも今までのキャプテンはプレイで引っ張る方が多かったんです。石川祐希さんもそうでしたし、シーズン途中で武智さんに変わりましたけど、二人ともプレイでチームを引っ張るタイプでした。その前の代だと井上慎一朗さんだったり、関田誠大さんだったり、得点を取ったり、セッターとしてチームを回す人がキャプテンだったんです。
そういう背中を見てついて行く後輩が多かったと思うのですが、僕の場合はリベロなので、得点を取れない分、プレイで引っ張るのは少し難しいんです。なので、プレイ以外でチームを引っ張るために、試合中声をかけ続けたり、僕が落ち着いてプレイすることで、周囲に落ち着いた雰囲気をもたらすことが出来ると思うので、そういうことを意識するようにはしていました。
だけど自分自身も試合によって、調子の良い悪いというものがあります。去年に比べると減ったとは思うのですが、まだそこの不安はぬぐい切れていないので、春リーグではその部分がチームにも伝わってしまったかなと思っています。だからこそ、キャプテンである僕がしっかりして、チームの状況がどうであれ安定的にプレイすることがチームにとって重要なことだと考えています。春リーグでの自分の状態は反省するべきだと思いましたし、これからもそこの部分は自分に求められてくるだろうなと思っています。
―そういう意味を込めた評価なんですね。
そうですね。あとはチーム、周りの選手の動かし方ということは一番上の立場になってみて凄く難しいなと思っています。チームとして試合に入っていっても、選手一人一人の調子の良し悪しがありますし、身体だけではなくメンタルの部分もあります。とても難しいですが、そういう状況の中に入っていって選手を動かすとか、調整する力は4年生しか出来ないと思うのですが、まだ動かし切れていないなと常に感じています。僕も初めてのことでもあるので、模索しながらやってみたんですけれど、任されたことに対して全うし切れていないなと思ったので、今後の東日本インカレとかでは、プレイだけではなくてそういった部分も課題だなと思っています。
―話は変わりますが、春リーグの中で個人賞を受賞している選手が中央大学さんにはいらっしゃいませんでした。しかし結果的に3位という素晴らしい成績を残されていますが、その理由はどこにあるのでしょうか?
このことも自分がキャプテンになってからずっと言い続けていることなんですけれど、今年のチームにはスター選手も、スーパエースもいなくて、いざとなった時にボールを託せる選手がいないチームなんです。そういうところがチームの短所でもあるのですが、逆に裏を返せばチーム力、頼るところがないだけに助け合おうという意識を全員が持っているので、トスが上がった所でそれぞれが決めようとする気持ちは強いと思います。誰かに頼るわけでもなく、一人一人が自分に与えられた仕事をしっかりこなそうという意識なので、個人賞は頂けませんでしたけど、結果として上位に入れたということを良く捉えれば、中央大学のチーム力という部分があらわれて得られた結果なのかなと思います。
だけど、個人賞という部分に毎年引っ掛かっていたものが、今年は一つも引っ掛からなかった。そのことが春季リーグを3位で終えたことに繋がっていると思います。やはり、サーブでも、スパイクでも、どこかしらに入っていけないとそこに軸がないということにもなりますし、そういった軸を作らないといけない。チーム力だけではこの先上位チームには勝っていけないですし、いざとなった時、劣勢になった時に託せるところがないと、チームとしてはずっと苦しい展開が続いてしまうので、そこは個人賞を頂けなかったという結果を受け止めて、これからも取り組んでいきたいと思っている部分です。
―ありがとうございます。続いて柳田選手のポジションについてお聞きしたいと思います。高校3年生の時にアタッカーからセッターへ転向し、大学に進学してからはリベロへポジションを変えられた経験がありますね。ポジション変更を決められた理由をお聞かせ下さい。
高校生の頃にスパイカーからセッターへポジションを変えた理由は単純にその時、チームにセッターがいなかったからなんです。細かい話をすると、高校の方針転換でスポーツ推薦がなくなった時期がありました。それでバレー部の新入生がゼロの年があって、セッターをやる選手がいなくなってしまったんです。そういう背景もあって、その時に「僕がセッターをやります」という風に自分の意志でセッターをやらせてもらうようになりました。
その後、大学に進学してからは、サイドアタッカーとしてプレイさせていただくようになり、というのも中央大学ではセッターの層がとても厚くて、キャプテンの関田さんをはじめ素晴らしい選手が沢山いましたので、入学当初はサイドアタッカーという形で、試合に何度か出させてもらいました。2年生になってからは、セッターの大黒柱だった関田さんが卒業され、僕自身もセッターをやりたいという気持ちもあったので、セッターをやらせてもらっていたんですが、夏合宿の時にスタッフの方々に「セッターよりリベロの方が将来的に見て、可能性があるんじゃないか」というお話をしていただいたことが、リベロにポジションを変えるきっかけになりました。
正直、その話をいただいた時、自分の中で葛藤はありましたけれど、スタッフの方との信頼関係もありましたし、言われたことに対して自分の考えに固執し、相手の気持ちを跳ね返すのは良くないなと考え、思い切ってやってみようということで、2年生の夏から本格的にリベロにポジションを変えることになったんです。
―柳田選手が様々なポジションを経験している背景にはそのようなことがあったんですね。ところで、ポジションが変わるのは大変ではありませんでしたか?苦労したことがあれば教えてください。
そうですね、セッターにポジションを変更した時に一番感じたことは、今まではワンタッチボールが上がった時に、一本目に対してレシーブで触りに行くじゃないですか。だけどセッターになってからはセットアップしなくてはいけないので、レシーブに行ってはいけないんですよね。ボールが自分の方に飛んできた時も、他のレシーバーが取れれば良いんですけど、体が勝手に反応して取ってしまうんです(笑)それはずっと言われ続けていました。
―身体に染み付いた癖が出てしまうわけですね。
そうなんです。リベロになった時に関しては特別な苦労はあまり感じなかったです。スパイカーだった時もレシーブをメインで任されていたので、コートでやることは変わらないかなと、前衛に行かなくなったことくらいで、二段トスもセッターとしての経験があったので、そこを活かせるかなと思っていましたし、今までやってきたことの強みを活かしてプレイ出来ているという感じです。
―試合を拝見していて思ったのですが、柳田選手の二段トスからは攻撃への意識を強く感じました。今でも攻撃への気持ちは変わらず意識されているんでしょうか?
意識しているというか、リベロになってからは攻撃に参加出来ないので、うずうずしている気持ちがあらわれているのかもしれないです。(笑)言葉には出さないようにしていますが、攻撃が上手くいかなかった時、少し気持ちが荒れたりすることがあります。「なんで今の決まらないんだ」と思ってしまうんです。その気持ちを表に出してはいけないので、自分の中で押し殺すようにしているんですが、納得出来なかったプレイに対して、イラつく気持ちが自分の中に溜まってしまい、結局は自分の調子を崩してしまうことが去年までありました。今年もそういったことがあるかはまだ分からないですが、サイドアタッカーがリベロになった時に指摘される弱点でもあるので、そういう部分がプレイに出てしまっているのかもしれません。悪いことかどうかは分からないですが、自分としては気を付けているところです。
―しかし、セッターがトスを上げられない状況では、他の選手がトスを上げなくてはいけませんよね。そうなると柳田選手のようにセッター経験がある選手がリベロとしてコートにいてくれることは、チームにとってとても心強いことなのではないでしょうか?
そうですね。リベロがトスを上げることが出来れば、どんな状況でもスパイカーに良い状態で持っていけるので、例えセッターが一本目を触ってしまってもアドバンテージにはならないと思います。そういう攻撃の部分に関してはセッターを経験しているので、リベロとして強みになるかなと思いますね。
―ちなみに、普段の練習ではどのようなメニューを行なっているのですか?何か特別なオリジナルなメニューがあるのでしょうか?
何か特別な工夫はしていません…(笑)サーブレシーブに関してもチーム練習でやるくらいですし、二段トスもチームにもう一人いるリベロの選手と一緒に練習しているくらいです。なので、基本を大事にして、普通の練習をしています。
僕はまだリベロとしての経験も浅いし、素人リベロなので(笑)特別な練習というよりかは基本を大事に練習しています。
―基本を大事にされているということなんですね(笑)では練習中、特に気を付けていらっしゃることはありますか?
これはチームとしても言えることなのですが、簡単なこと、当たり前のことを当たり前に行なうことが自分の中では一番大切なことだと思っています。チャンスボールとか、簡単そうなボールでも決まったところに返す技術が意外に難しかったりして、それが出来ずに攻撃のリズムを崩すこともあります。でもそのプレイが出来れば攻撃のリズムを作ることが出来るし、スパイカー、セッターも良い状況で次の判断をすることが出来る。
だからこそ僕は、簡単そうに見えるプレイだったり、当たり前のことを当たり前に出来る技術が、バレーボールの中で一番大事なことだと思っていて、僕たちは一年を通してチャンスボールの返球はしっかり取り組んでいます。
もちろん強いスパイクを上げることとか、速いサーブを上に上げる練習も大事だと思うのですが、練習して出来ることは限られていますし、まずは当たり前のことをきちんとやろうという意識でチームとしても自分としても取り組んでいるところです。
―ありがとうございます。柳田選手は試合前、または練習前に必ず行なうルーティンのようなものはありますか?
僕は本当にこだわりがなくて適当というか(笑)あまりこだわりがないので特には何もしていないんです。でもチームとして栄養指導を受けていて、試合前にはおにぎりを一個食べると良いとか、バナナを食べると持久力が上がるとか教えて下さっているので、そういうことはチーム全員が意識していて、僕も実践しています。
試合前のアップに関しても、チームで試合に向けて入っていく流れがあって、そこである程度はリズムが作れるので、僕個人として何か特別なことをしているかと言われるとあまりないですね。
―続いてバレー以外についてもお聞きしたいのですが、プライベートではどんなことをして過ごすのでしょうか?
僕は今、中央大学の寮で生活をしているのですが、寮が4人部屋で、誰かしらが必ず部屋にいる状態なんです。だからその同部屋の友達とどこかに行ったりはしますけれど、あんまり外に出かけないんですよ。正直言うと普段あまり休みがないので、三連休とかが来ると何をして良いか分からなくなります(笑)一日オフだと、基本は寮の中で過ごして、そうだな、寝てることが多いですね。多分他の選手もそうだと思います。あまりアクティブな人はいないですね。
―練習が生活の一部になってしまっているんですね。
そうですね。それと一日オフになっても次の日は練習があるので、頭のどこかで練習のことが気にかかってしまい、完全にリラックスすることが出来ないんですよね。どこかに遠出すると、それで疲れてしまって練習に響いてしまいますし、みんなあまり出かけないと思います。
―お休みの日も練習のことが頭から離れないのは大変ですね…では柳田選手が最近はまっていることや物はありますか?
個人的には最近、読書にはまっています。小説とかは難しいので僕はあまり分からないのですが(笑)ビジネス書に少し興味があったので、読んでみたらはまって、最近は結構読んでいます。
―そうなんですか。ビジネス書に興味を持つきっかけはなんだったんですか?
自分がもし社会に出たら、ということを考えたことがきっかけですね。バレーボール部の中でも就活をしている人がいるんですけど、将来、自分が社会に出て仕事をするようになった時のことを考えて「色々読んでおいた方が良いよ」と言っている人がいたので、それじゃあ僕も読んでみようかなと思って、読み始めました。
―それでは最後の質問です。東日本インカレが迫ってきましたが、目標をお聞かせ下さい。
チームとしては春リーグで出た反省点をどこまで修正出来るかということが大事になってくると思います。というのも東日本インカレで終わりではなく、全日本インカレがありますし、もちろんどの大会もどの試合も勝ちたいんですけれど、一つ一つの大会で出た問題を修正して、最終的には全日本インカレで日本一になれることが、チームとしての理想形かなと考えています。
今は春リーグで出た反省点を一つ一つ修正しているところなのですが、それが東日本インカレで出せなかったら何の意味も成さないですし、そのことを4年生だけではなく全員で意識して、東日本インカレに臨みたいと思っています。そして結果として、優勝というものがついてくれば次に繋がっていくのかなと考えています。
―ありがとうございます。東日本インカレ、全日本インカレ頑張って下さい。応援しています。

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