セール
セール
東海大学菅生高等学校中等部 男子バスケットボール部
小山 正男監督 インタビュー

第63回目のトップ指導者&選手特集では、50年間に渡り指導現場に立ち続ける名将・小山正男監督のインタビューをお届けします。8月に開催された全国大会でのエピソードや、中学生という育成年代を指導する上での難しい点、小山監督が指導者としてやりがいを感じる瞬間などについて語っていただきました。

取材日2018年9月12日

―本日はインタビューをお受け下さりありがとうございます。まずは、全中大会お疲れ様でした。今大会の感想をお聞きかせください。
そうですね。やはり一日に何試合も試合をしなくてはいけないことが大変でした。予選リーグでは一日2試合、決勝トーナメントでも一日で2試合をやらなくてはいけなかったので、その部分、身体のケアが大変でしたね。暑さもありましたし、体育館の中もかなり蒸し暑くなっていまして、中学生にとってはきつかったかなと思います。
だからあのスケジュールをこなせるようになるにはよっぽど鍛えないといけない。昔、決勝戦の後に優勝したチームの選手が「もうバスケットをやるのは嫌だ」と言ったらしいんですよ(笑)でもそのくらい鍛えていかないと戦えないと感じましたね。
きつい連戦になることは分かっていたので、子供たちにも言ってはいたんですけれどね。うちはどちらかというと上級生と下級生の区別があまりなくて、和気あいあいと、大人になっても趣味でバスケットをやりたいなというような子供たちがほとんどだから、それじゃ勝てないわ(笑)と思いました。
それと、うちはメンバーの中に体格差もかなりあって、試合に出られる選手が少ないことも厳しかったですね。
―中学生の男子生徒は特に体格差が激しくなる時期ですよね。
そうなんです。中学生は一番難しい時期です。例えば入学してきたばかりの子供はシュートが届かないんですよ。それが段々身長や身体が大きくなってくると、普通のシュートが打てるようになる。最初はジャンプシュートでも止まってシュートが打てないけれど、徐々にそれが形になって、ジャンプをしてからパッとボールを離せるようになれば良いなと思っています。中学生である今はその段階。中学生というのは全てにおいて、完成形ではないんです。
それに全国大会は全国の各ブロックを勝ち抜いてきた24チームしか出られない。必然的に出場してくるチームはレベルの高いチームになるので厳しい試合が続いてしまいました。試合が終わったら直ぐにマッサージを出来るようにしておかないと駄目ですね。連戦に備えて試合後のケアが大切だと思いました。
―京都精華学園中学校との準々決勝が終わった後に、生徒たちにはどんな風にお声を掛けられたのでしょうか?
「ご苦労さん」とは言いましたけれど、他にはあまり言いませんでした。子供も良く分かっていますから。試合後というよりかは、これから落ち着いてきたら最後に“ご苦労さん会”をするので、その時にでもゆっくり話をしようと思います。
―ここからは小山先生についてお聞きしたいのですが、小山先生が指導者の道に進まれたきっかけとはなんだったのでしょうか?
高校二年生の終わりごろですかね、バスケットは好きだけど、自分がこの身長では選手を続けるのは無理だと思い、それならば大学に行って勉強しようと思ったんです。それから指導者になるための勉強を始めました。
―そうだったんですね。ちなみに小山先生は指導をしていてどんな時に楽しいなと思ったり、やりがいを感じるのでしょうか?
指導をしている時にはそんなにありませんけれど(笑)、進学した大学などで活躍している選手がいるとたまに見に行くんです。その時は他人事のように試合を見ることが出来るし、面白いし、やりがいを感じますね。
僕が東海大菅生に異動してきた時、最初は高校生を教えていたんです。その時に教えていた選手たちがアースフレンズを作ったようなものなんです。去年からキャプテンをやっている、高山師門(現・アースフレンズ東京Z)も教え子ですし、沖縄でアシスタントコーチをやっている浜中謙(現・琉球ゴールデンキングス)も教え子なんですよ。彼等が「小山先生、試合を見に来てください」と言ってくれたり、この体育館まで来てくれたりするんです。それに彼等は夏休みがシーズンオフで暇だから(笑)講習会の合間とかに体育館に来てもらって選手を教えてもらっているんです。彼等には「お前たちの勉強になるぞ」と言いながらね(笑)
教え子たちも皆、何かしらバスケットに携わっていて、それを見るのが楽しみだったり、やりがいだったりしますね。自分が指導している時は苦しいかな(笑)勝負事にはどうしたって勝ち負けがつきまとうので。
―小山先生は前任の学校でもチームを何度も全国大会へ導かれていますが、どんなご指導をされていらっしゃるのでしょうか?指導スタイルやモットーなどはございますか?
立川の中学校で教えていた時は全国大会に行っているんですけれど、あの頃はミニバスが盛んではなくて、入部する子供も素人ばかりでした。だからそういう子供たちに如何にバスケットが面白いスポーツなのか、ということをまずは教えていました。その後にどれだけ体力が必要なのかということを教えていき、「もっとバスケットをやりたい」「もっと上手くなりたい」という気持ちを子供たちに思わせることが、他の人よりも少しあったのかなと思います。子供たちに「勝ちたい」という気持ちにさせる、ということですかね。
―中学生は多感な時期ですし、基本技術を身につける大事な時期でもありますよね。そんな時に気を付けられていることはありますか?
そうですね。丁度成長期なものだから、基本的な技術に関しても、高校、大学に行くと、ちゃんと自分の身体の形になって出てくるんですが、中学校はその前段階だから少し難しいですね。
それに膝の使い方も教えなければいけない時期。体格が良くなると膝が強くなるし、膝がきちんと動きの中に入ってくると、もっと正確に動けるようになるんです。でも中学生で無理に練習させてしまうと膝を痛める子が多いから、なるべく怪我をさせないようにしています。でも、バスケットは膝が強くないと勝てないんです。膝は本当に大事で、方向転換とかジャンプとか、ダッシュとか全ての動きに絡んでいる。大きい選手は特に膝が使えないと瞬間的な動作が遅くなってしまうんですよね。それをどこまで膝を壊さないように教えるかということが難しい。あんまりワーワーうるさく言うと子供たちも嫌がりますしね。今の子供はちょっとシュートが入ると有頂天になって「俺が一番だ!」なんて言うんですけれど、ちょっと入らなくなると「俺は駄目だ…」なんて言っていて、とても極端なんですよ(笑)そういう子供が多いなと感じます。
―心も大人に変わっていく難しい時期ですよね。
そうなんです。子供たちの気持ちの面も大事ですので、やはり最初はバスケットが楽しくて、バスケットが好きなんだと思わせて、それでその次に勝ちたいんだという気持ちが来るようにする。勝てば嬉しいんだということを単純に、分かりやすく教えていかないといけない。中学生にはあんまり難しい理屈ばかり言っても駄目なんです。高校へ行くと少し理屈から入りますけれど、中学の段階では単純に教えることが大事になってきます。そういうところに気を付けていますね。
―小山先生の目指すチームスタイルとはどんなスタイルなのでしょうか?
僕等のスタイルは、やっていて楽しいバスケット、見ている人が「よくやっているな」と思えるバスケットで速攻の多いスタイルなんですよ。華やかなダンクシュートは出来ないから、その次に面白い攻撃は何かと、ふと考えた時に、素早い攻撃が決まれば面白いんじゃないかと思って、凄く単純な考えなんですけれど(笑)
―全中でもチームを勢いづけるファストブレイクが何本も決まっていましたね。
得点的に競っている試合では、速攻を出さないと小さいチームは負けてしまいます。どこかで爆発的に得点を突き放す武器がないと勝負が出来ないんです。それにはファストブレイクが一番合っているのかなと思います。
―全国の先生方にメッセージやアドバイスをお願い致します。
中学校は、高校、大学に上がる段階の基礎技術を学ばせなければならない時期。だから最初はとにかくバスケットは楽しいんだ、やっていて面白いんだっていうことをしながら教えていかなければならないと思います。楽しいという気持ちがなければ中学生は離れていってしまいます。例え、バスケットがどんなに下手な子供であっても、バスケットを好きで部活に入ってきているわけだから、そういう子供にも声を掛けてあげないといけないと思います。よく「今年のチームは駄目だったから」とか決めつけてしまう人がいますけれど、そうではなくて、どんな悪さをする子でもそこは仕方がない。僕らが我慢をして、根気強く指導していけば子供も変わっていきます。バスケットが楽しいと思えれば、子供の中でも自信や力になって、他の部分も良くなっていくんです。バスケットをやるためには勉強もしっかりやらなくてはいけないしね。テストで赤点を取ってしまうと部活に出られなくなってしまうから(笑)
だからさっきも言ったように、如何に子供をその気にさせるかっていうことを理論よりも先に持ってきて、指導技術などはその後に持っていくと良いのではないかと思いますね。
―最後に小山先生の今後の目標などをお聞かせください。
僕は年だから、いつ引退しようかなって思っているところですよ(笑)もう75歳ですからね。目標というと僕自身はベスト8ばかりなので、正直もう一つ勝ちたいと思っています。ベスト8は嫌いだから(笑)ベスト4に入りたいですね。それで引退出来れば良いかなと思います。

ページTOPへ