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トップ指導者&選手特集

福岡大学附属大濠高等学校 バスケットボール部
片峯 聡太監督 インタビュー<後編>

トップ指導者&選手特集66回目と67回目の記事では、福岡大学附属大濠高校バスケットボール部の片峯聡太監督のロングインタビューをお届けする。
弱冠22歳という若さで名門・福岡大濠の監督に就任した片峯監督は、どんな想いを抱えて今日まで走り続けてきたのか…
67回目となる後編では、一つ一つのプレイに対するこだわり、近年の試合の感想や、主力選手を3人欠いた状態で臨まなければならなかったインターハイの舞台裏について語っていただいた。

取材日2018年9月8日

―片峯先生のコメントの中によく「泥臭いプレイ」という言葉が出てきますが、片峯先生にとって「泥臭い」とはどういう意味なのでしょうか?
それは当たり前のことを当たり前に行なうことだと思います。なんだかんだ言っても勝負とはひょんなことで決着が着くなと私は思っていて、例えば一つマイボールにすることを怠る、一つゴール下のシュートをポロっと落とす、誰もが決められるフリースローを落とす、そういうたった一つのプレイで勝負は分からなくなります。だからこそ日ごろから選手たちには当たり前に決められるプレイこそ「絶対に自分のものにするように」と徹底させています。簡単にいただけるものは素直にいただいておく。泥臭くプレイするとはそういう部分ですね。ディフェンスを一生懸命頑張ってギリギリまでチェックにいったとしても、最後相手に上手くかわされてしまったならば、それは仕方がないことじゃないかと。それなのに無理やりファウルで止めても、バスケットカウントを取られた上に相手にボーナスショットを与えるのでは逆に勿体ない。私が求める泥臭さとはそういうことではありません。ノーマークの時のシュートを外さないとか、ルーズボールでまだどちらのボールでもない状態の時こそ、一歩も引かずに強い気持ちでプレイすることを私は求めているのです。その部分は今までずっと選手たちに求めてきましたし、そういうプレイを当たり前にすることが大濠の真髄と言いますか、多分格好良く見える理由なのかなと思います。
田中先生も生前に「当たり前のことを当たり前に出来ることが一番難しい」とよく仰っていました。パッと身のこなし良く当たり前のことを当たり前以上に簡単にやる。その素振りが多分、格好良い姿に繋がってくるのかなと思います。だから当たり前のことを自然に出来るようになった時にまた「大濠は格好良いね」と言っていただけるのではないかと思います。ただ、歯を食いしばって辛い練習をすることが格好良い姿に繋がるのではなくて、当たり前のことを当たり前にきちんとこなすことが大事なのだと選手たちにも常々話しているんです。
―片峯先生は無限の可能性を秘めた高校生を三年間指導する上で、また結果が求められるチームを指導する上で、彼らにどこまでを求めて、指導にあたられているのでしょうか?
バスケットという競技は小学校、中学校までは足し算の考え方で良いと思います。足し算とは、いわゆる得点に結びつくようなプレイを一生懸命頑張ることですね。点数を取ることやディフェンスをハードに頑張ることもその内の一つでしょう。
そして高校生になってからは、更に引き算が出来る能力が求められます。例えば相手のディフェンスを崩せそうにない時、無理やりにでもシュートに持っていけば得点がプラスされるかもしれません。しかし、もしそのシュートが落ちた時、相手に速攻を決められたらどうするのか。相手に得点を決められるというマイナスの展開も考えてプレイを選択しないといけないのです。ディフェンスに関しても同様で、ギャンブル的に取りに行って抜かれる可能性が高いのであれば、間合いを開けて守る選択をするなど、高校生では試合の状況によって判断しながらプレイするレベルに達していないといけないと私は考えています。しかし、ガードの選手には、特にサイズのあまりない選手には私が知っている全てのことを教えるようにしています。
―それはどうしてですか?
ポイントガードというポジションには、今申し上げた能力プラス、割り算の要素が必要になります。5人の中のパーセンテージ、確率の話が出来るようにならないといけません。試合において大事な場面で、“どうしてこの選手にパスを出したのか?その責任や期待値はどのくらいあるのか?”などといった判断を一瞬で下す能力がポイントガードには求められます。それも私が指示をして行動に移すのではなく、コート上のリーダーとして自分で考え、チームをまとめて引っ張っていく力がガードには求められるからです。
また、サイズのあまりない選手は高校卒業後のバスケット人生においてガード以外のポジションにコンバートされることはあまりありません。ですので、この三年間で私が知っている全てのことを教えて、更にその先の人生で色んな経験をして、大きな花を咲かせられるようになれば良いと考えています。また、バスケットをする上で色んなことを知っておくことは良いことだと私は思っています。知ることで失敗に対しても敏感になりますし、確率の考え方を知っていれば、その先に進んだカテゴリーで試合を振り返る時の判断材料になりますので。試合を振り返る時にただシュートが入ったとか、入らなかっただとか、そういうことだけに注目するのではなくて「この場面でこの選手に任せたことが良くなかったんじゃないか」などとスタッツを見ながら、少し高度な試合の振り返り方を出来るようになることが、ガードというポジションには必要なことだと考えています。
―そのような高い能力をガードに求めるのは片峯先生自身がガードとしてプレイしていたからなのでしょうか?
私自身がガードとしてプレイしていたこともありますし、結局、ガードの選手は大学に進学しても、Bリーグに入れたとしても、他の選手に比べてコーチと会話をする機会が多いと思います。そこで言われるがままではなく、自分の考えを持ち、きちんとコーチに伝えられる技術や能力を持っていることが、彼らの将来にとってプラスになると思うのです。コーチも「この選手はここまで考えているのか。理解しているのか」と捉えますし、認められることでコーチからチームを任せてもらえるようにもなります。そこにこそ、小さな選手の生きる道みたいなものがあると思いますので、私が伝えられる部分は全部伝えるようにしています。
―ありがとうございます。ここからは昨年の試合について少しお話しをお聞きしたいと思います。昨年はインターハイ優勝、ウインターカップ準優勝と、素晴らしい成績を残された一年間だったと思いますが、片峯先生にとって去年の試合はどんな試合だったでしょうか?
そうですね。夏のインターハイはこの二年間、ずっと勝てていませんでしたので、本当に是が非でも勝ちたいという想いがありました。しかし逆に考えると負け続けていた分、変に背負うものもなく「やり切ろう」という気持ちで選手たちも一丸となっていましたし、チームとしても落ち着いて試合のプランを整理することが出来ました。全体的に良い状態で試合に臨めたことが優勝に繋がったのではないかと考えています。
あともう一つの勝因としては、1月から7月までの期間、ずっとチームで練習出来たことが大きかったかなと思います。それこそ去年は井上宗一郎(現・筑波大学)がU-18日本代表に選出されませんでしたので、残念ながらずっとチームに残って私の下で(笑)練習をしていました。本人としては残念ながら(笑)大濠で頑張るしかない日々を送ることになったのですが、やはり高校生ですので、仲間と共に過ごすことによりチームの和がきちんと出来上がりましたね。チーム全員の心が間違いなく通い合っていたし、優勝という同じ目標にベクトルがしっかりと向いていたと思います。
―インターハイ優勝の裏にはそのようなエピソードがあったのですね。また、冬のウインターカップでもインターハイと同じ明成高校との決勝になりましたが、こちらの試合は如何でしたか?
冬に関しては恐らく、福岡第一高校か、明成高校のどちらかとの戦いになるとは思っていましたのでどちらと当たっても良いように準備はしていました。実際に準決勝で対戦することになった福岡第一高校にはなんとか勝つことが出来たのですが、その後に一つ私が想定していなかったことが起きました。それは準決勝で福岡第一高校と対戦したその次の日に明成高校と対戦するというケースを想定して練習してこなかったことです。やはり福岡第一高校との厳しい戦いの後でしたので、選手たちもかなり堪えていて、その状態で明成高校と戦わなければいけなかった。これは完全に私の誤算でした。
―それほどに福岡第一高校との準決勝は苦しい試合だったんですね。
そうですね、福岡第一高校との試合では気持ちが高ぶる分動きも多くなりますし、選手たちには見た目以上の疲労が溜まっていたと思います。だから決勝の前半は特に苦しかったです。試合が始まってから「これはまずい。先に仕掛けないと一気にゲームの流れを持っていかれる」と思いまして、選手には「攻めるぞ」と伝えたのですが、やはり疲れもあってからか、ゲームにいまいち入りきれていない様子でした。結局最初の時点で明成高校の勢いに対して受け身になってしまったことが良くなかったと思います。私たちも最初に仕掛けることが出来ていれば、インターハイで勝っている経験もありましたので、上手く展開を変えることが出来たかなと思うのですが、あの試合はとにかく難しかったですね。
―今年のインターハイについてもお伺いします。今年はチームの主力でもある中田選手、横地選手、浅井選手の3名がU-18日本代表に選出され、もはや別チームと言っても過言ではない状態でのインターハイでしたが、どのような意識で臨まれたのでしょうか?
まるで別のチームのようでしたね(笑)しかし、主力選手が代表に選出されることは仕方がないことですし、今なら笑って話せますけれど2年前の広島インターハイで喫した初戦敗退の経験も今回活かすことが出来ました。あの年は西田、鍵冨と中田が代表に選出されていたのですが、実は九州大会では彼ら三人を代表から一度帰してもらって試合に出場させていました。それで九州大会が終わってからまた代表へ送るという形をとっていたのです。そのようなこともあり、九州大会は優勝した経緯があったのですが、結局インターハイの初戦でいきなり負けました。あの時の負け方は、私も一つ勉強させてもらったなという想いがあります。試合内容としても“頑張って、頑張って、それでも負けた”のならば「悔しいけれど仕方がない」と思いますが、あの時は試合中選手に指示が通りませんでした。指示を出しても選手と目が合わなかったのです。試合の前日までは練習もしっかりやれていて、ミーティングも行なっていたのですが、実際の試合では上手くかみ合わなかった。
―どうしてそのような状態になってしまったのでしょうか?
何故かと言うと、インターハイの初戦が主力の抜けたチームとして初めて挑む公式大会での試合だったのです。もちろんこのメンバーでも練習試合は沢山経験していましたけれど、公式戦の大きな大会は経験していなかった。九州大会でも主力を出場させていましたので彼らだけの試合はその時が初めてだったわけです。その時に経験というものがここまで影響するのかということを改めて思い知りました。彼らが悪いわけではなく、そういったシチュエーションを事前に想定していなかった我々の責任であり、申し訳ないなと思いましたね。一生懸命試合でやれていなければ話は別ですけれど、彼らは一生懸命にプレイしていた。しかしそれでも舞い上がってしまって、多分あの時は自分たちが何をやっているのかも分かっていないような状態でした。
―そこまで影響があったのですね…
しかしそういった経験を2年前にチームとしても私としてもすることが出来ましたので、今回は主力3人が抜けると分かった時点で、この3人を外したメンバーで夏は戦うと決断をしました。3人には「お前たちがどう思うかは分からないが、今年の九州大会ではお前たちを出さないようにする。何故なら2年前にインターハイに出られない主力を九州大会に出して、大事なインターハイで初戦敗退したことがあった。九州大会も大事だが、インターハイで勝つことの方が大事だ。例えシード権を取ることが出来なかったとしても、今回はインターハイで戦うメンバーで試合を経験したい。大濠にとってはこの選択が凄く大事なことなんだ」と伝えたのです。すると3人とも「分かりました」と納得してくれて、やはり高校生にもなると考え方が大人だなと感じましたね。当然彼らも試合に出たい気持ちはあったと思いますが、それを抑えて「自分はU-18日本代表の方でしっかりと頑張ってきます」と気持ちを切り替えることが出来る。日々の練習に対してもインターハイ主力組の練習相手としてチームを引っ張ってくれましたし、そういう日々を一か月半、チームとしてやり切ることが出来ました。九州大会でも実は初戦の九州学院戦は本当に危なかったのですが、負けそうになった状態をなんとか切り抜けて勝ち切ることが出来た。あの経験は大きかったです。あの試合を落としていたら、今年のインターハイでも2年前と同じようにおどおどするだけだったと思いますので。あのギリギリの場面で勝つ経験が出来たことと、九州大会の決勝戦まで進むことが出来たことが、インターハイ主力組にとっては少し自信に繋がったのかなと思います。
―それではチームとして雰囲気の良い状態でインターハイに臨めていたのですね。
それでもインターハイでは、二つしか勝てませんでしたけれどね。しかし彼らが堂々と戦うことで、大濠というチームは、選手がいる、いないに関わらずしっかりとバスケットをするんだなという印象を全国大会で示すことが出来たかなと思っています。だからこそ代表組がチームに合流した時には今よりパワーアップをしなければいけない。「絶対に全国の頂点に立たなくてはいけないよな」とインターハイ後、全員に話しをしました。今は丁度、その目標である頂点に立つために、まずは全国大会への出場権を得るための、福岡県予選大会に向けて頑張っているところです。毎日が本当に勝負ですし、キャプテンの山本が中心となって、チームを引っ張る姿を見ながら、私としても今年のチームをなんとしても勝たせてあげたいと思っています。
―ウインターカップ福岡県予選の決勝、11月3日の試合は日本中が注目する試合になるかと思いますが、意気込みを改めてお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
福岡第一高校の井手口先生とも話をしているのですが、まずは福岡選抜として出場する福井国体で、全員がしっかりとスクラムを組んで戦い、福岡県がどれだけ力を持っているのかということを全国の舞台で披露したいと思っています。福岡第一高校も私たちと同じように、主力選手が抜けた状態でインターハイを戦っていましたので、全国大会で自分たちの本当の力を示せていないわけです。だからこそ国体では福岡県が持っている本当の力を皆さんにお見せして「やっぱり福岡のレベルは高いな」と感じていただきたい。また、国体で結果を出すことで今年の日本最高峰の戦いが11月3日(ウインターカップ福岡県予選の決勝日)にあるんだと思っていただけるのかなと考えています。
(※福井国体少年男子バスケットボール決勝戦は福岡選抜-愛知選抜の戦いとなり101-76で福岡選抜が4年ぶり9度目の優勝を果たした)
そしてその11月3日に行なわれる福岡第一高校との戦いに関しては、お互いに絶対に譲れない戦いになると思っています。選手たちはもちろん、私も一人のコーチとして勝ちたいですし、是が非でも、死に物狂いで戦って、ウインターカップの出場権を取りにいきたいと考えています。また、今年一年間の成績として福岡第一高校に一度も勝てませんでしたので、その借りを返したいという気持ちもあります。全敗のままでは格好悪いですから「もうやるしかないぞ」という気持ちで、最後の最後に勝って、今までの悔しさを晴らしたいなという風に思っています。
―最後に片峯先生の今後の目標をお聞かせください。
私の目標はオリンピックに出場して、世界を舞台に活躍出来るような選手を一人でも多く輩出することです。もちろん私の立場からすると大濠というチームを強くすることは根本的な目標として存在していますし、更に私も未だに経験したことのない“ウインターカップ優勝”というタイトル獲得をチームの目標として掲げています。しかし、それはあくまでも一つの達成目標なだけであって、彼らの、そして私の指導者としての最終目標ではありません。やはり今、これだけ日本バスケットボール界が動きつつある中で、私と彼らの最終目標としては卒業後、それぞれの場所で活躍し、将来的には日の丸を背負って世界を相手に戦えるような選手になることだと考えています。その最終的な目標を達成するためには、チームを勝たせるための「強化」だけに偏ってはいけないですし、かといって選手の「育成」だけに偏るのも良くないと思います。バランスが非常に難しいことではありますが、なんとか選手を育成しながら、チームを勝利に導いていける、そんな指導力を私自身が今後身につけていかなければいけないなと考えています。
―片峯先生の教え子たちが将来日の丸を背負って戦う姿を想像すると、とてもわくわくしますね。本日はお忙しい中、長時間にわたりお話しを聞かせていただきまして、ありがとうございました。
ありがとうございました。

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