トップ指導者&選手特集

東海大学 バスケットボール部
陸川 章監督 インタビュー<後編>

トップ指導者&選手特集71回目と72回目の記事では、東海大学バスケットボール部を率いる陸川章監督のインタビューをお届けします。後編となる72回目では、陸川監督のポジティブ思考を生み出した出来事や、陸川監督が師と仰ぐデイブ・ヤナイコーチにまつわるエピソード、指導者として大切にしている考え方などをお話しいただきました。

取材日2018年11月22日

―お話しを聞いていて、陸川監督はとてもポジティブな思考で物事を捉えられているのだなと感じます。そのポジティブな考え方はどこから来ているのでしょうか?
これはですね、私の生まれた家からきているのだと思います。私は祖母に育てられたのですが、その祖母が芯の通った強い女性でした。例えば、私は子供の頃走るのが速かったのですが、かけっこで1番を取って「勝った!やった!」と喜んで家に帰ると、祖母に怒られるのです。「自慢高慢馬鹿の内!」とね。それで逆に私がかけっこで負けることもあって、落ち込んで帰ると、もっと怒られるのです(笑)「下に何が落ちてる!負けるが勝ちだわや!」と、これは田舎言葉ですが、“負けは次に繋がるのだからある意味勝ちなんだ!”という意味です。そうやって幼い頃から勝っても負けても徹底的に鍛え上げられたので、天狗にもなれないし、下を見て卑屈にもなれないのです(笑)常に真っ直ぐしか見ることが出来ないように育てられました。また、何かが起きても泣き言なんか聞いてくれないので、自分で解決しなくてはなりませんでした。そんな時にもともと本を読むことが大好きだったのですが、あらゆるジャンルの本を読む中で「こういう考え方があるのか。だけど婆ちゃんが言っていたことと似ているな」と思ったものです。やはり人間は幸せになるために生まれてきているわけで、それならば暗く考える必要はない。今起きている全てのことは、自分を成長させるために起きているのだと思えたり、その出来事から学んで次にどう活かすのか、ということが大事なのだと気づいたのです。それはバスケットにせよ、人生にせよ変わらずに自分の中の根底にあると思います。
―私自身かなりネガティブ思考なのですが、陸川監督を見習ってポジティブに物事を捉えたいなと思っています。物事をポジティブに捉えるコツがあれば教えていただきたいのですが…
コツですか。そうですね、例えば何か問題が起きてネガティブになりそうな時、第三者的な目で「これは何を学ぶために起きているのだろう」と、注意深く観察することが大事です。そうすると何かが見えてきます。例えば、チームで問題が起きたとします。その時に「嫌だな」ではなく「お、きた!」(にやり)と捉えるようにするのです。「これは成長するためのチャンスだ」と捉えてその問題をよく観察する。そうすると「ここでもう一度皆の気持ちを引き締めて心を一つにするチャンスだ」と思えるようになったりします。ピンチこそチャンスだという風に捉えることがポジティブ思考のコツかなと思います。
―ピンチはチャンスだと捉えるのがポイントなのですね。
はい。NKK時代の研修の時に学んだのですが、悩んでいることの九割は実際には起こりません。ですから残りの一割が起こったとしたら、それは何か自分が学ぶために起こっている。だから“ピンチこそはチャンス”だと捉えるようにするのです。
また、知人の紹介でチベット自治区大統領の講演を聞く機会があったのですが、その大統領が仰った「解決出来ないのであれば悩む必要はない。解決出来るのであれば悩む必要もない」という言葉に感銘を受けました。彼は何を言いたかったのかと言うと、チベット自治区とは非常に厳しい歴史的背景があり、簡単に解決することが出来ない問題を抱えています。その中で解決出来るものは出来るし、出来ないものは出来ないのだから、何も悩む必要はないということを彼は言いたかったのかなと思います。その言葉を聞いて私は驚きました。この方は究極のポジティブ思考というか、前向きな人だなと。やはり大統領になられる人というのは温顔で、賢くて、そういう方と触れ合う機会は早々ありませんが、そういう出会いや本を読むことで、色々な考え方を知ることも物事を捉える上で大事な方法の一つだと思っています。
―そのように読書をされたり、色々な人と触れ合ったりということは昔から行なわれていたのでしょうか?
そうですね。NKKの選手時代から練習ノートに読んだ本の感想や気になる言葉を書き留めてきました。そのノートがかなり溜まっていて、今は私のゼミの資料になっています(笑)学生たちに「これ、どう思うかな?」とか言ったりしています。
私はバスケットを教えることは当然ですが、私の得た人生経験の中で“これは絶対に幸せになるために必要な道だ”と思うことや物は、どんどん学生たちに提供していきたいなと思って取り組んでいます。
―それは楽しそうなゼミですね。私もポジティブ思考になれるようにピンチの時はチャンスだと思えるよう意識してみます。話は変わりますが、東海大学と言えば多くのBリーガーを輩出していますが、それと同じくらい多くの指導者を輩出されていますね。(※琉球ゴールデンキングスの佐々宣央HC、東海大学付属諏訪高校の入野貴幸HC、飛龍高校の原田裕作HCを始め全国各地で卒業生が指導者として活躍中)教え子たちが指導者として活躍する姿を見て如何でしょうか?
卒業生の活躍は本当に嬉しいですね。そもそもバスケットは試合に勝つことが目標ですが、彼らは人を大事に、勝利へのプロセスを大事に指導をしているなと感じます。彼らが指導する選手たちを見ていても、人間力がきちんと鍛えられていますし、一人一人の人間力をアップさせながら、チーム力をアップし、技術と戦術を高めていく。そのようにチャンレンジしていることを感じて、凄く嬉しく感じています。私はもともと、東海大学は選手たちの人生における土台作りになれれば良いと思っているのです。選手だけでなくスタッフも含めて、色々なものの考え方や、人生のファンダメンタルを作る場所でありたい。その土台が出来ればあとはどのコーチの下についても選手として活躍出来るだろうし、指導者になった時も考え方がブレずに取り組んでもらえるのではないかと思っています。もちろん、卒業後は本人の努力が一番大切ですが、その努力をするための土台をこの4年間で磨き上げて、ホップステップジャンプのように、更に飛躍していって欲しいなと考えています。
―指導者を目指す選手たちに何かアドバイスをされたりするのでしょうか?
日本スポーツ界では以前から暴力や様々な問題がありましたが、私は昔からそういったことが大嫌いでした。選手たちにも常々「我々は家族なんだ」とずっと言っていましたので、そういう指導を私は絶対に認めないと話しています。特に指導者を目指している学生には「絶対に違うからね」と伝えるようにしています。
―現在、スポーツ界だけではありませんがパワハラを始め様々な問題が浮上しています。勝利至上主義が原因だと言われることもありますが、スポーツをする上で勝利を目指すことはごく自然のことのように感じます。
当然です。勝利を目指すことはバスケットをする上で当たり前のことだと思います。
―しかし、今後のスポーツ界にとって、特に育成年代の指導現場にとっては育成と勝利至上主義のバランスが非常に難しくなるのではと感じています。そのあたりのバランスはどのように取っていけば良いと思われますか?
私は選手を引退した後サラリーマンをしていましたが、指導者を目指してデイブ・ヤナイさんという素晴らしいコーチがいるアメリカへ留学をしたことがあります。そこで彼は私に「選手は機械ではない。選手は人間だ」という言葉をかけてくれました。彼はコーチとして日本に何度か来日していたこともあり、日本の指導現場に何かを感じていたのかもしれません。私もデイブさんのその言葉に全く同感でした。だからこそ彼の下でコーチングを学びたいと思いアメリカへ渡ったのです。もし彼がヨーロッパで指導していたら間違いなくヨーロッパへ行っていましたね(笑)その彼から教わったことの一つに「二つの山を登りなさい」という言葉がありました。
―“二つの山”ですか?
はい。まず一つは技術の山です。戦術の山とも言えます。バスケットが上手くなることです。もう一つは心の山を登りなさいと言われました。これについては、物事をポジティブに捉える思考だったり、落ち込んだ仲間を助けたり、ファイトする闘争心を磨き上げることです。そしてデイブさんは「この“技術の山”と“心の山”の二つを登り切ると、もう一つの山が見えてくる。それがチャンピオンの山だ」と仰っていて、どちらかだけの山を登ってもチャンピオンの山は見えてこないということを教わったのです。ですので、勝利を目指すためには技術を磨くことも必要になりますが、それだけでは真のチャンピオンになれません。技術と同時に心を磨かなければいけないのです。
更に私は結果も大事ではありますが、プロセスが大事だと考えています。例えばチャンピオンを目指して一生懸命努力したとしてもチャンピオンになれるのはたった1チームです。ではそれ以外の負けたチームは駄目だったのか?いいえ、駄目ではありません。私も選手時代にインタビューでそう答えたことがあります。準優勝で終わった試合直後、インタビュアーの方に「残念ですね」と言われて「はい。残念です。だけど我々は駄目ではありません」と答えました。それまでにチャンピオンを目指して努力したことは素晴らしい財産になるし、今後に繋がる力になるということが私の根本的な考え方なのです。だから結果は当然ですが、プロセスこそ大事にしなければいけない。勝利のために何を準備してきたのか、トレーニング、技術、戦術、またチームワークを高めるためにどんなことをしてきたのか。例えば皆で映画を見たりミーティングをしたり、チーム全員が一つになって戦う努力をどれだけしてきたのか。そういったプロセスが凄く大事で、それが出来た時にこそ、真のチャンピオンに近づけるのではないかと思っています。
―心と技術、プロセスが大事ということですね。ありがとうございます。ちなみに現在、指導に携わっている方や、これから指導者を目指す方に大切にして欲しいことはありますか?
そうですね。先ほどもデイブさんの言葉をご紹介しましたが、選手は機械ではありません。選手は人間なのです。例え相手が子供であろうと大人であろうと、それは変わりません。同じ人間でどちらかが偉いとか、そういったことはありえません。そのことを決して忘れないで欲しいです。具体的に小さい子供たちを指導している方には、子供たちのアクションを見逃さないように注意深く見てあげて欲しいですね。どれだけ小さい子だったとしても訴えるものが絶対にあります。そして彼らに耳を傾けて欲しいしそのアイディアが素晴らしかったら褒めてあげて欲しい。そうすると子供たちは本当にグングン成長していきます。更に年齢が上がってくると、選手たちには自我や自分なりの考えが生まれてきますので、その考えを否定したりせずに積極的に発言させて欲しいのです。そして彼らの意見を尊重しながら一緒になってチームを作っていってほしい。そうすると素晴らしいチームになると思います。もちろん勝つか負けるかは分かりませんが、心が温まるというか「このチームに携わって良かったな」と思えることが指導者にとっても幸せなことなのではないかと感じています。
―ありがとうございます。最後にインカレが近づいてきましたので、インカレへの意気込みをお聞かせください。
インカレではベストを尽くしたいと思っています。そして今まで全員で取り組んできた“小さなこと”を大事にしてプレイしたいです。
―小さなことですか?
はい。このことはずっと選手にも言ってきたことです。例えば、ダッシュのドリルがあるとして手前の50cmを残して力を抜くのか、最後まで全力で走り切るのか。ディフェンスで相手に抜かれた時に、もう一歩足を出すのか出さないのか。そういう「小さなことに全力で挑戦しようよ」と選手たちに言い続けてきました。その微差を積み重ねていけば、それはいずれ大差になってあらわれる。最近の関東リーグは本当に実力差がなくなってきていると思います。どの大学も力がありますし、皆がそれぞれに面白いバスケットをしている。そうなった時に我々はどこで差をつけるのか?と考えて「この小さいところこそ磨き上げる部分だ」と気づいたのです。それから今までずっと挑戦してきました。ですので、この取り組んできたプロセスを皆で大事にして、後は本番に力を出すだけですね。全員で挑みたいと思います。
―ありがとうございます。インカレ頑張ってください。応援しています。
ありがとうございます。頑張ります!

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