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杵築市立杵築中学校 剣道部
高倉 聖史監督 インタビュー

第73回目となるトップ指導者&選手特集では、大分県杵築市立杵築中学校で剣道部を指導する高倉聖史先生にインタビューを行ないました。
高倉先生が指導者を志すきっかけとなったエピソードを皮切りに、剣道を指導する上で大切にし続けているこだわり、全国大会で悲願の初優勝を果たした瞬間の思い出話など、様々なお話を聞かせていただきました。

取材日2018年9月9日

―高倉先生が指導者になりたいと思われたきっかけを教えて下さい。
指導者になりたいと思ったきっかけは、僕は自分が高校三年生の時の担任の先生が大好きだったのですが、その方が体育の先生だったんです。その先生は野球部の先生だったのですけれど「教員になって帰ってこい」と僕に言って下さったんです。その言葉があったのでこの道に入ろうと思いました。当時僕は剣道部に所属していましたので、それならば体育の先生をして“部活で剣道を指導しながら頑張りたい”そういう思いがあって指導者になりました。
―先生にとっての剣道とはどんな存在ですか?
剣道というものはやはり生きがいであり、自分にとっては人とコミュニケーションを取る手段として最適なものだと思っています。僕の中では、自分の気持ちを伝える一番の得意分野でもありますね。
―高倉先生は剣道をしている時に楽しいなと思う瞬間はどんな時でしょうか?
僕は剣道をしている時以外で、一生懸命何かに取り組んでいることがあまり無いんです(笑)だからせめて、剣道をやっている時、面をつけている時だけは手を抜かずに一生懸命取り組んでいる自分を自分で褒めてやりたいし、汗まみれになっている自分が好きだなと思います。そういう風に一生懸命剣道に取り組んでいる時に楽しいと感じますね。
―先生が指導をされた生徒たちが初めて全国大会出場を決めた瞬間はどんな気持ちでしたか?
初めて教え子が全国大会に出られた時、僕はそのチームのベンチに座れなかったんです。実は転勤で学校を異動しておりまして、三年生の子供たちが全中の出場を決めた時、僕はその中学校にはいなかったんです。でもその異動先の中学校でも全中の個人戦に出場する子がいたことと、審判員も担当しておりましたので、僕自身も全中に行ってはいたのですが、去年まで一緒に剣道をしていた子供たちが団体戦に出場している姿を見て、そのチームのベンチに座れなかったことが寂しかったですね。だからその時「いつか絶対に、自分が団体戦のベンチに座れる状態で全中へ出場してやろう」という気持ちを抱いたことを覚えています。
―そんなエピソードがあったんですね。それではその後、実際に先生が団体戦の監督として全中に出場され、初優勝された時はどんなお気持ちになられたのでしょうか?
決勝戦に進んだこと自体が三度目のチャレンジでした。その前に勤めていた中学校で男子、女子の順番で決勝戦に進んだのですが、二回とも決勝で負けてしまっておりました。
三度目にこの杵築中学校を率いる形で決勝戦まで進むことが出来たのですけれど、その時は全国大会の決勝という大舞台でも、子供たちが普段の力を出して戦っている姿にこちらも勇気づけられまして、不思議とベンチの中で僕は落ち着いて見ていることが出来ました。結局試合は、代表戦までもつれたのですけれど、勝負が終わって優勝した瞬間というのは、まるでテレビを見ているみたいだなと思いましたね。ずっと試合会場にいたのに、試合が終わった時に初めて、会場の広さとか、照明の明るさとか、観客の人数とかが見えてきたんです。まるでテレビを見ているみたいだなと、終わった瞬間に初めて感じました。多分それまでは試合に集中していたんでしょうね。
―優勝した瞬間に緊張から解き放たれたんでしょうか?
多分そうだと思います。試合が終わるまでは全くそういうことに気づきませんでしたから(笑)試合が終わって拍手が鳴り止んだ瞬間に、会場の広さ、明るさ、人の多さに気づいて本当にテレビを見ているみたいでした。
―それほど集中されていたんですね。さて、話は変わりますが、高倉先生は今まで沢山の生徒をご指導されてこられたと思いますが、中学生を指導されてきた中で何が一番大切ですか?
まず、中学生という年齢は反抗期の時期でもありますので、中々自分の気持ちを表現することが出来ない時期です。だから子供は意味もなく不貞腐れたり、本当に意味もなく心と裏腹の行動を取ったりします。子供たちが本当はどうしたいのか、子供たちの本音の部分を僕たちがしっかりと掴まないといけないなと思いますね。
そしてあとは自分が感じたことを信じて、やることですかね。その辺のところは気を付けて指導しています。
―具体的にはどのようにコミュニケーションを取られているのでしょうか?
そうですね。言葉だけではなくて、人間はやはり仕草とか、表情などでも解ることがあると思います。だから子供たちが話したくなかったらこちらも聞かなければ良いかなと考えています。肌で感じることもあると思うので、僕は「この子は話したくないのかな」と思ったら後はそっとしておくタイプですね。僕も子供の立場でしたら、多分そういう風にしてもらいたいかなと思いますので。そのようにコミュニケーションの取り方も気を付けてはいます。
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―ありがとうございます。ここからは指導方法について質問したいと思います。高倉先生と言えば斬新な発想をもとに独特な稽古を考えられている印象があります。それらの稽古はどのように考えられているのでしょうか?
え、僕の稽古って斬新ですかね?(笑)
―ボールを使った稽古や二人羽織稽古などは斬新かと思いますが…(笑)
ボールを使った稽古ですか(笑)でもこちらの方が分かりやすいんじゃないかな?と思っただけなんですよ。よくものの例えと言いますけれど、そのままやっているだけなんです。例えばですけれど「自転車に乗るように持つ」とか言うじゃありませんか。それなら「自転車を持ってきて実際に持った方が早いじゃないか!」と僕は考えるわけです(笑)そんな感じで稽古方法も考えてしまうんです。
あと僕が若い頃にですね、ある学校でかなり独特な練習をしていることを知りまして、その時「剣道の稽古ってここまでやっていいのか!」と思ったこともきっかけの一つですね。自分らしく思いっきりやっても良いんだと思ったんです。
今日の撮影でも紹介した“面にゴムを付けて打つ稽古方法”も、サッカーボールにゴムがついて戻ってくる玩具が通販とかで売っていますよね。あの玩具を見て「これだ!これは使える!」と思ったわけです。
―普段の生活から着想を得ているわけですね。
そうなんです。普段の生活にある物の方が良いですね。気楽に取り組めないと子供はとっつきにくいと思うんです。いわゆる剣道の練習というと、出来なかったら怒られてしまうんですよ。でも僕の考える稽古だと出来なくても怒られない(笑)だから子供たちも気楽に取り組めるんです。気楽というところがポイントで、その方が子供たちも出来るようになるんです。「出来なかったら怒られるかな」とか余計なことを考えないから。だから子供たちが出来るようになるためには、気楽に取り組める稽古をすれば良いんだなと思ったんです。子供たちが間違えてしまうのは、方法を伝えきれていないこちら側の責任だと思っていますので。
―斬新な発想から生まれる稽古には、生徒への配慮が反映されていたわけですね。それでは最後の質問となりますが、高倉先生の今後の目標をお聞かせください。
そうですね、僕はこの杵築中学校というところにお世話になって、もう15年になります。ここで指導者として迎え入れていただいて、一度は転勤もありましたが、皆様のお力添えのお陰で奇跡的に戻ってくることも出来ました。前にいた学校に戻るということは中々あることではありませんので、僕の場合は本当に運が良く、このように戻らせていただくことが出来ました。
年齢的にもあと6年で定年でもありますので、やはりこちらの学校には恩返しをしたいですね。僕はここをホームグランドだと思っておりますので、もう一度ここで日本一になりたいです。この杵築というところに恩返しをするためには、もう一回日本一を目指して、頑張りたいと、このように考えております。
―杵築中学校剣道部の益々のご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。

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