筑波大学附属小学校
平川 譲先生 インタビュー

ティアンドエイチ最新インタビューでは、第96回のインタビューに引き続き、筑波大学附属小学校体育研究部の平川譲先生のインタビューをお届けします。
本インタビューでは、平川先生にとっての子どもたちの存在、仕事をする上で心掛けている事等、今まであまり語られる事のなかった平川先生のパーソナルな部分に迫っていきます。

取材日2020年9月24日

―平川先生の現在までの経歴を教えて下さい。
大学を卒業後、千葉県の公立小学校に10年間務めました。初任校に5年、その次の学校でも5年務め、その後に筑波大学附属小学校に異動して現在に至ります。
―筑波大学附属小学校では前任校と比べ、職務内容が大きく変わられたと思います。平川先生が大変だなと感じた事等をお聞かせ下さい。
筑波大学附属小学校に異動した当時は、先輩方の授業のレベルに追いつこうとするのがとにかく大変でした。かなり長い期間に渡り「自分はここにいて良いのだろうか」という不安を抱えながら働いていた事を記憶しています。
また、筑波大学附属小学校では全学年の体育授業を担当するのですが、それぞれの段階で何をすれば良いか等、考える事が多くありましたので、その点が凄く大変でした。ただ、幸運にも私は千葉県の公立小学校にいた10年間で、1年生から6年生までの担任を務めました。本校赴任後もその経験を活かす事が出来たと思います。男性の20代で全学年の担任経験を持っている事は珍しいケースだと思いますが、2校目に赴任した学校に男性の先生が多くいらっしゃった事もあり、低学年を担任させてもらえたのです。その経験から、全ての学年の発達段階は理解出来ているつもりで、筑波に異動しました。ある程度経験は活かせましたが、やはり学校が違えば実態も違うし、同じ学年でもクラス毎でも違う。慣れるまでは中々大変でしたし、最初の年は先輩方の授業を、空き時間の度に見学させてもらって、真似する事から始めました。
―全学年の体育授業を担当される事に対して、良いと感じた部分はありますか?
縦の系統が常に全学年分見えているので、1年生だと“こういう様子”、2年生のこの時期は“こんな身体と動き”というものが掴めた部分ですね。これにより、各学年の発達段階に合った授業を行なう事が出来るので学習成果は上がりやすいと思います。
―平川先生にとって小学校の先生の魅力とはどんなところにありますか?
とても大きな変容が見えるところだと思います。子どもにとっての6年間は身体の大きさもそうですし、体育で言えば“動きの巧みさや力強さ”がかなり変わってきます。また、精神面でも大きな成長が見られますので、そこに関われる事が魅力的です。
―先生が仕事をしていてやりがいを感じる瞬間はどんな時でしょうか?
やはり子どもが成長して変わっていくところを見ている時、あるいは子ども個々としても、集団としても「ポン!」と一段、階段を上るように大きく変わる時があるので、そういう瞬間に立ち会えた時に非常にやりがいを感じます。
―仕事をする上で平川先生が心掛けている事はありますか?
子どもに対しては、授業をしっかりと行なう事を意識しています。消化試合にしないで毎時間、きちんと向き合う事を心掛けています。失敗する事もありますけれど・・・(苦笑)
大人同士の場合では、頼み事をする時はこちらから相手のもとに出向いて、極力顔を合わせながらお願いするように意識しています。
あとは提出物を期限内に提出する事も心掛けているつもりです。学級担任は40人分の提出物を集めます。そういう時に、提出期限に遅れてしまったり、バラバラに持ってこられると大変な思いをしますよね。やはり集めてくれる人の負担にならないようにしなければいけない。その想像力は働かせないといけないだろうなと日ごろから気を付けています。
―平川先生にとって、子どもたちはどんな存在ですか?
子どもたちは仕事相手でもあり、ある意味それ以上で、常に私を楽しませてくれる存在です。
私たちの仕事はサービス業なので、サービスを提供する相手である子どもたちに、出来るだけ良い授業を提供しなければいけないと考えています。それが自分自身にとって、楽しく生きがいになっているなとも感じています。
ただ、私たちは大人で指導をする立場でもあるので、言わなければならない事、伝えなければならない事がありますし、叱ってでも修正しなければならない事もあると考えています。
―平川先生の今後の目標や、夢を教えていただきたいです。
あまり大きな夢や目標は掲げていなくて、敢えて言うならば毎日必死に、子どもと向き合って授業をしていく事が私の目標かなと思います。あまり先の事や夢を考えないタイプかもしれません(苦笑)
―日々の積み重ねを大事にしているわけですね。それでは最後に小学校の先生を目指している大学生に一言、アドバイスをお願いします。
教員という仕事は楽しいけれど、楽しいだけではありません。きつい事も苦しい事もあります。本校の佐々木昭弘副校長がこの前子どもたちに「学校は楽しいところじゃないよ」と話された事を私に教えてくれました。
―楽しいところではない、ですか。
はい。佐々木先生はその後に「学校は君たちがどう過ごすかで楽しくもなるし、そうではなくなる可能性もある。君たち自身が楽しくするところなんだ」と仰っていて、私はこの話を聞いた時、教員側にも同じ事が言えるだろうなと思いました。仕事は楽しいけれど、それはきつい事、苦しい事から逃げずに向き合うからこそ感じる喜びでもありますので、結局は自分自身がどう過ごすのか、というところなのかなと思います。
また、今はコロナウイルスの問題で大学の授業はオンラインになる等、大変な時期だと思います。課題も多くてストレスを感じる事もあるでしょうし、アルバイトをしている学生はそのアルバイトも無くなってしまうかもしれません。だけどzoomやSNS等のツールを使って多少なりとも誰かとコミュニケーションを取る事は出来ると思います。大学生のみなさんには積極的に周囲とのコミュニケーションを取って、学び続けて欲しいなと思います。特に入学したばかりの新一年生に関してはひとりぼっちにならないように、上級生が気を付けてやって欲しいですね。
―ありがとうございます。一日も早く大学の通常授業が再開される事を願わずにはいられません。本日は本当にありがとうございました。
ありがとうございました。

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