秋田市立泉中学校 男子バスケットボール部
小納 英之監督 インタビュー<前編>

1月に開催されるJr.ウインターカップ(U15バスケットボール選手権大会)への出場権を、チーム全員の力で掴み取った秋田市立泉中学校男子バスケットボール部。ティアンドエイチ最新インタビュー特集では、部を率いる小納英之先生のスペシャルインタビューをお届けします。
前編では、小納先生が指導者を志したきっかけや理想の指導者像、チームスタイルについて語っていただきました。

取材日2021年11月6日

―小納先生がバスケットボールを始めたきっかけを教えてください。
確か小学校3年生の時だったと思うのですが、3つ年上の従兄弟がバスケットをやっていて、小学校最後の全県大会を見に行ったのがきっかけです。5年生からミニバスを始め、その後は中学、高校と競技を続けました。
―どうして指導者になろうと思われたのですか?
中学の頃は教員ではない外部コーチの方が指導をしてくれていましたが、当時はまだ教員以外はベンチに入れない時代だったので、タイムアウトの度に観覧席にいるコーチに助けを求めるみたいなことが多々あって、中学の終わりくらいにはバスケットの指導をするためには教員にならないといけないと考えるようになりました。それと、自分の選手としての限界を感じるのが早かったと思います。やればやるほどバスケットボールが楽しくなっていきましたが、同時に「勝ちたい」と思う気持ちも大きくなるわけです。でも、選手としては高いレベルでプレーするだけの能力はなくて、そんな時に指導という世界だったら私でも戦えるのかもしれないと思ったのがスタートです。
―指導者になられてから、苦労されたエピソードがあれば教えていただきたいです。
指導することに対する苦労はほとんどないのですが、結果を出そうと考えると色々と悩みました。特に全国大会に出場するようになってからは、他県のチームの選手層や環境の違いなどには驚かされましたね。秋田県には昔から今まで学区外の学校に越境入学する文化がなく、私が全国大会に行かせてもらったチームも、ほとんど学区内の生徒で編成されていました。しかし全国大会に出てみると、高い志をもった選手たちが著名な監督の先生を慕って入学してくる有名な中学校が沢山あって、とにかく秋田とは選手層や一人一人のファンダメンタルが違うなと感じました。また、長期休みに全国規模のカップ戦に出場させていただけるようになると、そのカップ戦への出場回数の差にもびっくりしました。
「先月はありがとうございました」という会話が当たり前のようにされていて、能力のある選手たちが、素晴らしい指導者のもとで、たくさんの経験を積んでいることに気付かされました。そのような中で、このチームが勝つにはどうすれば良いのか?ということにずっと悩み続けて、一時は「秋田では全国大会で勝つのは厳しいだろう」と諦めた時期もありました。ただ、後輩の指導者たちがジュニアオールスターで新潟や福岡のような強豪県と接戦を繰り広げたり、前回のJr.ウインターカップ(U15バスケットボール選手権大会)では秋田代表の城南中学校が優勝をしたりしているので、今は自分の考えも変わってきましたし、学区の子どもたち、秋田の子どもたちでも工夫次第では戦えるのかなと思っています。
―小納先生はどのような時に指導者としてやりがいを感じられますか?
指導者はいつも優れた選手がたくさんいるチームを指導できるわけではありません。それでも、どんな子どもたちにもできることが何かあるわけで、それをチームオフェンスの中に組み入れて結果が出た時はやりがいを感じます。例えば、リバウンドを取ることしかできない子のナイスリバウンドから良いファーストブレイクが出たりとか、身長が小さくて足が遅い子がチームで作ったノーマークの3ポイントシュートを決めたりとか、チーム全員で共有した一人一人の良さが結果に表れた時に嬉しいなと感じます。
―小納先生にとっての理想の指導者像と理想のチームスタイルを教えてください。
理想の指導者像は、まずは情熱があること、工夫ができることです。そしてこの二つの要素のバランスが丁度良い指導者が理想です。これらはどちらかに寄り過ぎてしまっても駄目だと考えていて、例えば工夫や技術論も無く「頑張れ!頑張れ!」「走れ!走れ!」と言うだけでも駄目だと思いますし、評論家のようにすべてのことを戦術論・技術論で解決しようとするのも違うと思います。情熱と工夫、その二つの要素のバランス感覚が絶妙な指導者が理想で、大尊敬している中村和雄先生がまさに私が目指している指導者像です。
私はどちらかと言うと工夫に寄り過ぎている方で、ボールを貰うこと一つをとっても、貰えないならプレイヤーの足を鍛えるという考え方と、貰えないなら良いスクリーンを利用するという二つの考え方がある時、私はスクリーンを利用する方法を選択してしまいます。しかし中学生の場合、工夫を先に教えてしまうとファンダメンタルや基礎体力が鍛えられない恐れがあるので、毎回どちらを選択するか悩みながら指導しています。どんなカテゴリーの選手たちを指導していても、鍛えることと工夫することのバランスがピタッと合っている指導者になりたいと思うのですが、中々難しいです…。また、理想のチームスタイルは速いことです。展開の速いバスケットは、同じ時間でも技術を使ったり、判断したりする回数が多くなりますから、同じ時間の練習や試合で、遅いバスケットよりは速く上手になるのではないかと考えています。そして、何といっても速くてハイスコアなゲームが、見ていて楽しいですよね。
―中村和雄先生のお名前が上がりましたが、中村先生と小納先生の出会いをお聞かせいただけますか?
中村和雄先生と私は同じ高校出身なのですが、私が高校3年生の時に先生がクリニックに来てくださいました。先生は当時共石(共同石油…現ENEOSサンフラワーズ)にいらっしゃった頃だと思いますが、その時に初めてお会いしました。私の時代は能代工業高校の全盛期でしたので、全国大会出場などは考えたこともありませんでしたが、そんな時にOBである中村和雄先生のクリニックを受け、「強豪校を卒業しなくても指導者だったら日本一になれるかもしれない」と思ってしまい、共石の近くにあった千葉大学を受験しました。
受験には失敗し練習を見学させていただこうという自分の願いはかないませんでしたが、その後もOSG(OSGフェニックス…現・三遠ネオフェニックス)など先生のバスケットボールはずっと拝見させてもらっておりました。そして、中村和雄先生が秋田ノーザンハピネッツのHCに就任されることになり、高校のOB会主催でお祝いの会を開いた際に、先生と運良くお話しさせていただく機会があり、その時から本当にお世話になっています。温かいお人柄で、いつも可愛がっていただいており、感謝の気持ちでいっぱいです。そして、何より憧れの中村和雄先生との時間は、私にとっては夢のような時間ですね。
後編に続く

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