清明学園中学校 ソフトテニス部
高橋 茂監督 インタビュー

2020年は教育現場にとって激動の一年間となりました。新型コロナウイルス感染拡大による異例の一斉休校、ICT教育の導入、更には数多くのスポーツ大会、文化大会、年間行事の中止や延期など、誰もが出口の見えないトンネルを歩き続けた、長く険しい苦難の連続の日々であったと感じています。
ティアンドエイチでは、そんなコロナ禍の教育現場の状況を多くの方に知っていただきたいと考え、「教育現場の今」を特集するスペシャルインタビューを行なっております。
第二回目となる特集では、清明学園中学校ソフトテニス部監督の高橋茂先生をゲストにお迎えし、休校中に行なっていた清明学園独自の取り組みや、コロナ禍を過ごす中で表れたポジティブな変化、全国の中学生に向けて「何を大切にして日々を過ごしていくべきか」という考え方についてお話ししていただきました。

取材日2020年12月4日

―2020年はコロナウイルスの感染拡大により、部活動停止や大会の中止など、大変な一年間となってしまいましたね。清明学園では部活動が出来ない期間、どのような取り組みをされていたのか教えてください。
はい。部活だけではなく学校を休校せざるを得ない状況になった時、とにかく時間が沢山ありましたので「読書をして人間力を上げよう」という事を考え、子どもたちに図書カードや読んで欲しい本を贈ったり、見て欲しいなと思う映画や動画などをラインで送ったりしていました。更にSNSを活用して様々な情報を共有するようにしました。例えば「勉強をこれだけしました。本はこれを読みました。お手伝いはこれをしました。トレーニングはこれをしました」と、子どもたちが日々の生活で何をして過ごしているのかをラインで送ってもらい、情報を共有するようにしていました。また、トッププレイヤーであるフェデラー選手が公開していた自宅で出来る壁打ちトレーニングがあるんですけど、それを子どもたちに送って挑戦してもらったり、三重高校の玉川先生がラケットを使ったコーディネーショントレーニングをSNSで紹介してくれていて、それに対しても、たとえクリア出来なくても良いから「◯日までに挑戦するように」と指示を出すなど、色々な課題を出していました。
―自粛期間中、かなり積極的にコミュニケーションをとられていたんですね。
そうですね。コミュニケーションはかなり取っていたと思います。その他にも部員同士がお勧めする動画や本に映画、音楽などをラインに投稿するようにしたり、グループを4、5人くらいに分けてzoom上でトレーニングを行なったりもしていました。更に高校の全国大会で活躍している先輩の中学時代の動画を送ったり、モチベーションUPを目的とした動画も作りました。この動画は部員間のメッセージや音楽をのせて繋げるという、凝ったものではないんですけど気持ちの面では大きな効果があったかなと思います。あとは小学校の時の先生とか、ジュニアの指導者の方々、日ごろお世話になっている理事長先生、校長先生、担任の先生などに感謝の気持ちを手紙に書いて送ったりするなどの取り組みもしました。
また、自粛期間中は実際に集まって練習は出来ませんでしたが、逆に良かった事もありました。実は休校中に部員同士がオンラインで繋がった経験によって、ある子どもたちがお互いをオンラインで繋いだまま沈思黙考、自学自習をするという学習方法を生み出したんです。学校再開後の試験前にその勉強方法を実践して、その子たちはかなり成績上位に入っていましたので、これは凄い事だなと思いました。
―それは素晴らしいですね。色々な取り組みをされていた中でも、夏の全国大会が中止となってしまった事は選手たちにとっては凄くショックだったと思うのですが、そういった事は選手にどのようにお伝えされたのですか?
大会中止が発表された時も直接会う事が出来ない時期でしたので、中止に関しても部員たちにはラインで伝えました。でも、子どもたちもあの時は状況を分かっていましたよね。“こんな状況で大会が出来るわけない”という事が分かっていたので、私もラインでそのまま「大会はなくなりました」と伝えたんです。中学三年生に関しては「代替大会が行なわれるかもしれないから、それに向けて気持ちを切らさずに頑張ろう」というように伝えて、もちろんその中で、高い目標をもって勉強に向き合っている子もいるので、「勉強に切り替えても良いよ」という事も伝えました。
―中学三年生にとっては難しい時期でしたね。学校はいつから再開されたのですか?
授業再開は5月末でしたが、実際は6月の頭に分散授業という形で再開をしました。分散、時差、短縮授業という形でしたのでほとんど顔あわせ程度でしたね。
―その中で部活動はいつから再開されたのですか?
部活動は7月頃に再開する事が出来ました。6月は少しでも早く生徒たちを家に帰して、最低限の勉強時間を確保するのが最優先という状況でしたので、部活動再開を望める状況ではありませんでした。
―部活を再開するにあたり、どのような対策を取られていたのでしょうか?
活動自体はオンライン上でトレーニングも出来ていましたし、全てがストップしていたわけではありませんでしたので、生徒の様子を見ながら再開をしました。手洗いうがいは当然徹底して行ないましたが、最初は何をどこまでやれば良いのか分からない事も多くて、30分毎に消毒の時間を取るなど、オーバーかなと思いながらも、しつこいくらい感染防止対策を行ないながら、何とか再開したという感じでしたね。
それと、もう一つ気を使ったのは熱中症でした。熱中症に関しては本当に無理をしないで少しずつ暑さに慣れていくようにトレーニングを重ねていくという感じでやっていました。自粛期間中もある程度、暑熱順化トレーニングを行なうように指示はしていましたが、本当に無理をしないように少しずつ暑さに慣れていく事を優先していました。
―東京の夏は毎年異常な暑さですよね。
本当に暑くて大変ですよね。ただここでも良かった事が一つあって、今年は熱中症予防のため体育の授業でグラウンドを一切使わなかったんですよ。基本的に授業は全てエアコンを回しながら換気をした体育館で行ないました。授業に関しても、最初の内はボールの共有に対しても不安を感じていましたので球技などは行なわず、ソーシャルディスタンスを取りながらも実施出来るトレーニングのみをひたすら行なっていたんです。そうしたら、その一ヶ月のトレーニングにより学校全体の体力数値が凄く上がり、過去20年間測定し続けている結果の中で今年の数値が一番高く出たんです。ですので、何事もやりようによっては良い結果に繋がっていくんだなって思いました。
―それは凄い成果ですね!話は少し変わりますが、現在ソフトテニス界が凄く盛り上がっていますね。プロプレイヤーの誕生など素晴らしいニュースが続いていますが、この動きについて先生はどのように感じていますか?
そうですね、一気に色んな分野で活躍している人が増えているので、今ソフトテニスを楽しんでいる中学生にとっては良い刺激になっていると思います。動画配信もそうですし、ソフトテニスの指導でご飯を食べていける人も出てきています。トップ選手はプロになって、それで生活が出来るというわけですから子どもたちは凄く目標が大きくなっていると思います。清明学園の部員たちも動画はよく見ていて詳しいですし、中にはプロになりたいと考えている子もいます。そういう意味では現在のソフトテニス界の発展というものは、中学生にとって良い刺激でもあり良い傾向だなと思っています。是非この流れが今後も続いて欲しいです。
―先ほどフェデラー選手の話が上がりましたが、現在多くのアスリートが様々な動画を配信していますね。先生は日頃からこのような動画を見たり、チェックされたりするのでしょうか?
はい。かなり動画を活用しています。良いなと思う物は練習でも積極的に取り入れていますし、私自身とても勉強になります。皆さん色んな角度から、色んな視点から動画を出してもらえるので分かりやすいものが多いです。
―ソフトテニス以外の競技の動画も見られているのですか?
もちろん見ています。ソフトテニス以外の競技のトレーニング動画だったり、体育の授業に活用出来る内容の動画なども見ています。あとは、良いプレーが集まっているハイライト動画なんかもよく見るようにしています。ああいった動画は中高生が何かをしながらでも見れるというか、グッと集中して見なくても勉強になりますので、時間がない方などにはそういった動画はお勧めですね。
―現在、中学生が好きなスポーツに打ち込める環境がなかなか無かったり、学校行事なども感染状況によっては中止になってしまうような状況ではありますが、様々な制限が掛かっている中で、全国の中学生にこういった時こそ何を大切に過ごしていけば良いか、アドバイスをいただけたらと思います。
まずは感染症を予防するという観点から、免疫力をしっかり上げて欲しいと思います。それは体の免疫力もあれば、心の免疫力も上げましょうという事です。心の免疫力というのは、例えば目標に向かっていく中で挫折したりとか、苦しい事、きつい事、理不尽な事など、色んな事が起こると思いますが、そんな状況の中で必要となるのは頑張る力だと思うんです。私はこの力を心の免疫力という言葉で表現しています。そしてその免疫力を身につけるためには、色んな本を読んだり、色んな映画や動画を見たりする事が大切だと思います。世界中には自分たちよりも先に色んな事を乗り越えている人たちが沢山いて、そういう人たちの生き様から何かを学ぶ事で、心の免疫力を上げる事が出来ると思います。
また、コロナ禍について感想文を生徒に書いてもらったのですが、その中に「当たり前の事が当たり前ではなくなって、感謝の気持ちが芽生えた」と書いていた子がいました。当たり前だった練習が急に出来なくなって、じゃあその当たり前は誰が支えてくれていたんだ?と考えた時に、「保護者がコートの予約を取ってくれていた。学校の先生が練習を見てくれていた。コートがある。仲間がいる。ラケットがある。シューズがある」という事に気づいたわけです。例えば体調を崩しても病院があってお医者さんに診てもらえるとか、そういう事を全てひっくるめて、今まで過ごしてきた日常の中に多くの人の支えがあった事に気づいたと感想文には書かれていました。
今は世界的にもとても大変な時期だと思います。好きなソフトテニスに思うように打ち込めないジレンマを感じる時もあるとは思いますが、このコロナ禍という日々を過ごす中で、出来ない事に目を向けるのではなく「出来なくなった事によって、こういう事が得られたよね」という事に目を向けてもらえたら良いなと思っています。
―感染状況によっては難しい状況ではあると思いますが、現在の皆様の目標を教えてください。
男子は二年前、全国大会の準決勝で負けてしまいました。その試合を見ていた子どもたちが今年の3年生ですので「絶対に日本一を取り戻そう!」という意識で日々の練習を頑張っています。また、女子は初めての全国大会出場を目標としているので、その目標に向けて皆で協力して日々頑張って過ごしています。
―清明学園ソフトテニス部の今後のご活躍が益々楽しみになりました。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。

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