日本女子体育大学 新体操部
橋爪 みすず部長 インタビュー<前編>

ティアンドエイチでは、新型コロナウイルス感染拡大により、様々な影響を受けている教育現場の状況を多くの方に知っていただきたいと考え、「教育現場の今」を特集するスペシャルインタビューを行なっております。
特集の第三回目では、日本女子体育大学、新体操部部長の橋爪みすず先生をゲストにお迎えしロングインタビューを行ないました。前編では、新型コロナウイルスが及ぼした授業や部活動に対する影響、自粛期間中の取り組みや部活動再開後の生徒たちの様子を語っていただきました。

取材日2020年12月22日

―新型コロナウイルスの感染拡大により、全国では行事の中止や縮小、授業はオンラインへと移行する大学が増えております。日本女子体育大学ではどのような対応を取られたのでしょうか?
はい。全国的に2月の下旬から活動自粛という状態となり、日本女子体育大学でも卒業式は各研究室内で卒業証書を授与するなど、かなり縮小した形で行なわれました。また部活動に関しては3月の中旬まで活動を行なえておりましたが、3月末から大学が閉鎖されることとなり、学生たちは地元に帰郷するなど一旦部は解散、4月の入寮式や入学式も行なうことができず、そのまま長い長い自粛期間に入りました。実際に本学でオンライン授業が始まったのは5月の連休明けからです。実技も講義もオンライン授業を一斉に開始し、その後感染が落ち着き始めた6月の中旬から、実技の授業のみ大学内で行なうという方針に切り替わりました。それと同時に部活動も徐々に再開していったという形です。
―実技授業もオンラインで行なわれていたんですね。
そうなんです。実技といっても陸上から球技、水泳など、私も新体操の授業を担当しているのですが、様々な実技の授業がある中で「いったいどうやって実技授業をオンラインでやるのだろう?」という不安な気持ちはありました。しかしながら我々の大学は体育大学ですので、講義、理論だけでは適切な指導はできませんし、今年の学生だけその経験を積むことができないとなると、例え卒業はできるかもしれないですが、学び得る物としては例年の学生に比べて少なくなってしまいます。そのような状況を踏まえて大学からは、「畳一畳分でできる実技内容を考案して、オンライン授業を行なうように」と指示があり、それぞれの科目ごとにオンライン授業を実践することになりました。
―実際にオンライン授業を実施してみて如何でしたか?
私の指導する新体操の実技に関しては、通常通りの授業では省略してしまうこともある、体を健康的に保つための柔軟体操やストレッチの時間を、十分に取ることができて良かったかなと思います。また、オンラインであったとしても新体操の手具を使うという目的で、身近にある物を代用して練習する工夫をしたと共に、対面授業だけではなかなか触れられなかった新体操の歴史や、新体操とはどんな競技なのかというような映像を盛り込んで、学生たちを飽きさせないように、また新体操に興味を持ってもらえるような授業を工夫して行なったつもりです。合計で7~8回の授業を行ないましたが、学生たちは新体操に興味を持ち、楽しみながら前向きに取り組んでくれていましたので、オンライン授業に対してある一定の成果は得られたかなと思います。
―オンライン授業だからこそできた授業内容やそれに伴う成果があったわけですね。このコロナ禍の中では、失ってしまった物や機会に目を向けてしまいがちですが、今のお話を聞いていて、橋爪先生の前向きな考え方にとても感動しました。
ありがとうございます。私は以前から学生に話す機会がある度に「失った物を数えて嘆くのではなくて、その中で何ができたかということを考える。そのものが次に繋がるんだ」ということをずっと言い続けてきました。先ほど仰られた言葉の中にもありましたけれど、今年は“失った物”がクローズアップされた一年間だったと思います。今年の学生たちも「あれがなかった。これが出来なかった」と失った物に対して嘆く場面もありましたが、「できないことを数えるのではなくて、今これができた、これはできるかもしれないということを考えると、もっと楽しくなると思うよ」と伝えてきたつもりです。ですので、苦しい状況の中でも達成感を見いだせるということを、今回のオンライン授業に取り組む中で実践できたことも良かったことの一つだと思っています。
―ここから部活動についてお聞き致します。自粛期間中、橋爪先生はどのようなことを学生たちにお話されましたか?
私が日本女子体育大学に赴任したのは今年(2020年度)の4月からですので、自粛期間が始まった時はまだ大学の辞令をいただいていなかったこともあり、部員たちと直接話をする機会を得られないまま自粛期間へ入ってしまいました。自粛期間に入ってからは各学年のリーダーや、チームリーダーの学生とリモートでミーティング会議を何回か行ないましたが、その際に「どうして、今年だけこのような状態になってしまったんだろう」とか「今年は自分たちが目標としていた試合や演技発表会ができるのか?」という不安な言葉が多く上がりました。そういった中で「そういうことを考える必要はない。今、それを考えても誰も先のことは分からないし、解決することはできない。そのようなことを考えるのではなく、今何をやっておけば日常が戻ってきた時にその力を発揮することができるのか?ということを考える方が大事だよ」と、学生たちには何度も話してきました。
また、今までは分からなかった、できないことに対する自分の感情、その時どんな風に感じたのか、そういう感情を自分が持つということは、おそらく昨年までの日常からは想像もできなかったことだと思います。今回、自分の中にできない、またはやれないということが目の前に起こった時に、こんな感情が生まれるんだという自分の心に気づいたと思ますので、それをこれから忘れないように過ごしていって欲しいと思いました。実際に部員たち全員と顔合わせをしたのは自粛明けの6月でしたが、その時に「今までのように練習ができる日常が戻ってきたとしても、あの時自分がどんな気持ちだったかということを忘れないで過ごしていくことが大切なんじゃないかな」ということを伝えました。
―自粛期間中はどのような活動を行なわれていたのでしょうか?
日本女子体育大学新体操部には約75名の部員がおりますが、個人として日本のトップを目指している学生、団体で全国大会のトップを目指している学生、そして一般部員として新体操部に関わり、年に一度の発表会を目標に頑張っている学生たちなど、様々なカテゴリーの学生が在籍しています。ですので自粛期間中、全員に同じ活動をさせるわけにはいかず、そのことがとても難しかったです。しかしながら自粛期間中にも競技力を向上させなければなりませんし、自粛期間とはいえ練習を自粛するわけにはいきませんので、専門のコーチからトレーニング内容をリモートで発信してもらったり、地元に帰っている学生の練習環境、状況を把握するなど、日常の体調や体重管理なども含めて、学生たちと毎日のようにコミュニケーションをとりながら活動を行なっていました。
―6月頃から部活動が再開されたとのことでしたが、練習を再開するにあたりどのようなことを注意されましたか?
活動を再開させるにあたり注意すべき点は二つありました。まず一つは、自粛期間中トレーニングをしていたとは言え、衰えてしまった様々な機能をどのような順番で元の数値まで戻していくかということです。この領域に関しては専門的な知識のあるトレーナーに、運動時の心拍数をどれくらいまでにした方が良いだとか、筋肉のダメージを最小限にするためには、どのような注意が必要かということを中心に、一週間区切りのトレーニングメニューを作成していただきながら、具体的に指導をしていただきました。
もう一つは自粛期間に体重が増加してしまう学生もいましたので、その体重を急激に減らしてはいけないという観点から、コロナ禍における日常の食生活をどのようにするべきかということについて、今度は管理栄養士の方に資料を作成してもらい、それを参考にしながら、心と体を安全に戻していくことを心掛けていました。
―久しぶりに全員で活動する様子を見た時、橋爪先生はどのようなことを思われましたか?
なんとも言えないと言いますか、頭の中で言葉を探しても、どのような言葉が自分の気持ちに当てはまるのか分からない、不思議な感覚だったかなと思います。当たり前だった光景なのに、本当にこういう日がくるとも思えない日々でしたし、一言で良かったとは言い表せない気持ちになりました。この日々は果たしてこれからも継続できるのかという不安や、三か月の自粛期間の中で、それぞれがトレーニングをしていたとしても、日常を積み重ねるということはこれほどまで大事なのかと感じるほど、技術的に落ちてしまった部員たちの姿もありましたので、あの時を一言で表現するならば「大変なことだな」という風に感じました。
後編に続く

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